2010年05月12日
【木挽棟梁のモノサシ(杉岡世邦)】<4>役割

木の力を引き出す
「ところで、木挽(こびき)棟梁(とうりょう)って、何ですか」。読者の方から、こんな質問をいただきました。少々長くなりますが、説明しますね。
木挽きとは、もともとは、大鋸(おが)と呼ばれる大きい鋸(のこぎり)を使い、丸太を柱や板などの材木にする仕事です。大正時代ぐらいまで、家を建てるときはまず木挽きに相談。木挽きが、材選びや家の間取りなどを決め、材を大工さんに渡す際には木に番号を振り、どこにどう使うか指示したといいます。
棟梁というと、大工頭を思い浮かべる方が多いでしょう。木挽きもまた、日本の木造建築の重要な役割を担う、もう一人の棟梁だったのです。
私は大鋸は使いませんが、役割としてこの「木挽棟梁」を目指しています。家づくりの一員でありたいという願いからです。
「えっ、製材所って家づくりの一員じゃないの?」
少なくともうちは違いました。経済成長とともに製材所は機械化・大型化し、板専門、柱専門といった分業化が進みました。
それに伴い製品の集まる木材市場が発展。13年前、家業を継いだときは、うちも木材市場での販売が主で、住宅資材メーカーのような存在でした。なにせ、どこで誰に使われるか知らないままでしたから。
木を妻にする家と書き「棲家(すみか)」と読むように、木材は長らく家づくりの中心にありましたが、今はどうでしょう。「木造」を売りにする、とあるローコスト住宅会社の木材費用は5%程度しかありません。また、「住宅展示場で無垢(むく)の国産材を所望すると、『コストが高くなる』と言われた」と聞くこともしばしばです。今や世界で最も安い丸太は、日本の杉だというのになぜでしょう。
それは木の持つ癖に一因があります。ヒビ割れ、すき間のほか、曲がったり、腐ったり。でも、その癖を理解し、肌触り、香り、調湿・断熱効果などを考え、中長期的視野を持って適材適所で使えば、木はその力を発揮し、癖は長所にもなりうる。住み手も作り手も本当は木が好きなのに、使えないのはもったいないことです。
大工をすし屋に例えるなら、木挽棟梁は確かな目で魚を市場から仕入れる魚屋。魚屋が最適な状態で魚をすし屋に渡し、職人が腕を振るうからこそ、客はおいしいすしが味わえる。私は木の建築文化も、これと同じだと思うのです。
日本の森の存続が危ぶまれていることは、皆さんもご存じでしょう。でも、わが国には、杉を中心に使える木はたくさんあります。そんな中で施主に木の魅力をお伝えし、目先の安さに惑わされない望ましい需要をつくりだすことは、林業再生を図る上で外せません。私の役割、おわかりいただけたでしょうか。
(福岡県朝倉市「杉岡製材所」専務)
=2009/12/13付 西日本新聞朝刊=

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