西日本新聞

2010年05月12日

【木挽棟梁のモノサシ(杉岡世邦)】<7>耐火性

太い柱や梁は、「燃えしろ」としての耐火性も備えている

木は鉄よりも強し

 私が住む地域で4日、子ども会で「鬼火たき」という火祭りをしました。青竹で高さ約6メートルにもなる四角い櫓(やぐら)を組み、中に木材や竹、ササの葉などを詰めて火をつけて、お札やしめ縄などを焼く新春の恒例行事。その火にあたって、もちを焼き、1年間の無病息災を願いました。

 「傷んで伐(き)られた神社の桜の木を一緒に燃やせませんか」。今年はそんな相談があり、燃え尽きるまでの時間を尋ねられましたが、直径30センチ以上の未乾燥丸太を、たき火程度の火力で燃焼し尽くすのは困難です。

 木は確かに燃えますが、表面が焦げて炭化層ができると酸素の侵入が抑えられ、1分間に約0・6―1ミリしか燃え進みません。炭がゆっくり燃えるのと同じ理屈だといえば、わかりやすいでしょう。実は、「木は火事に強い」のです。

 実際に家を燃やす火災実験では、1階が1時間も燃え続けたのに2階には燃え抜けませんでした。木の2階床の裏面が炭化し、炎の侵入を防いだのです。

 また、木と鉄に荷重をかけ、加熱炉で燃焼させた森林総合研究所の実験でも、鉄だと軟化して強度が5分で半減、10分後には2割以下に低下したのに対し、木は10分後に8割程度、半減したのは20分後でした。

 熱を伝えにくく、温度が上昇しても軟化しない木の特性を生かしたのが「燃えしろ設計」です。火災により一定時間、木が炭化する分を見こし、柱や梁(はり)など構造材を太く割り増す。建物が崩れ落ちないようにすることで、避難時間を確保するわけです。

 今や日本の窓の9割以上を占めるアルミサッシと木製サッシの違いを比較した火災実験も面白い。国内の防火基準(準防火地域)では金属製の窓と網入りガラスが要求されますが、アルミ製の枠は点火後、10分も経たないうちに溶解。ガラスが落ち、室内に空気が急激に吹き込んだことで火勢が激しくなりました。

 一方、木製の窓枠は、熱でガラスが割れた後も黒くなっただけ。しかも火の当たらない裏側は元のままでした。

 深夜、3階建ての1階に放火され、家族が逃げ遅れた住宅火災で、通報から20分後に鎮火し、建物の中から救出された例があります。たまたま取り残された部屋の窓がすべて木製サッシだったのです。その木製サッシは、ガラスブロックを溶かしたほどの高温の炎にも耐え、室内に煙や火を入れなかったそうです。

 安全・安心で快適な家とは何か。可燃物である木材は、用途が厳しく制限されていますが、これまでの常識にとらわれず、自然素材の持つ性能を再評価し、もっと建築に生かしていくべきではないかと、私は考えます。
(福岡県朝倉市「杉岡製材所」専務)

=2010/01/17付 西日本新聞朝刊=

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