西日本新聞

2010年05月12日

【木挽棟梁のモノサシ(杉岡世邦)】<10>家造り

成熟した木からとった赤身の柱材(左)と、間伐材からとった一般的な柱材

成熟した木でこそ

 「どれくらい太っちょるかい?」。子どものころ、祖父に連れられ山に行くと、決まって最も大きな木を指さして、私に巻き尺を手渡しました。

 「おまえがおれん歳(とし)になりゃあ、こん木も、えらいもんになっちょろう」。木の成長に目を細めた祖父は、90歳くらいまで山に入り続け、6年前、93歳で他界しました。

 林業家は木を育てるために手入れします。なかでも重要なのが間伐。植林し十数年も経つと枝葉が重なり成長を阻害し合うので、一部を抜き伐(き)り、日当たりを良くします。その後も5―10年おきに、育ちの悪いものや曲がったものから除き、優れた木を残します。

 ところが、2007年の世論調査「森林に対する期待度」では、1位「地球温暖化防止」、2位「災害の防止」、3位「水資源の確保」で、木材生産はなんと8位。森林環境税の徴収が始まった福岡県でも、間伐の重要性は認識されつつありますが、それは環境維持のための手入れであり、その副産物である未成熟な木材が間伐材-というイメージではないでしょうか。

 でも、福岡県こそ植栽後40年生以下の木が大半ですが、全国的には41年生以上が人工林面積の6割を占有。つまり、間伐材といえども成長した木が多く、むしろ木造住宅への国産材利用では、その程度の太さからとった杉やヒノキの10・5―12センチ角が主流となっています。柱や土台などに使われるそれらの適寸丸太は、直径16―18センチほどですから。

 逆にこれより太くなると、多くは細く薄く製材され、筋交いなどの準構造材、一辺が3―4・5センチの角材、または板材となります。桁(けた)や梁(はり)など大きい構造材は、輸入材が多く使われるからです。

 私はこの現状を「間引き菜しか食べない家づくり」と表現しています。ダイコンを育てる過程でとれた間引き菜ばかり食べ、肝心のダイコンには見向きもしないのと一緒だから。本当にもったいないことです。

 なぜなら、太く育った杉には赤身材が多いから。苗のころの木は、ほとんど白太(しらた)で、樹木内の水分移動が容易な細胞構造ですが、成長し太くなると、芯から徐々に赤身へと変わります。微生物の嫌いな樹脂や色素を合成し、微生物などが通らないよう水の通路をふさいだ細胞へと変身。これにより、皮がはげて腐朽菌などが入り、たとえ白太が腐っても赤身部分で抑え、風で揺れても折れないような樹幹を維持できます。

 これを、長年住み続ける住宅の骨組みに生かさない手はないと思いませんか? 杉は軟らかく、梁や桁には向かないという方もいますが、その分、大きく使えばよいだけ。家の新築・増改築をお考えの方はぜひ、成熟したダイコンを食べていただきたいと思います。
(福岡県朝倉市「杉岡製材所」専務)

=2010/02/07付 西日本新聞朝刊=

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