2010年07月15日
むすび庵便り・八尋幸隆<15>教育 子に残すべきもの

「あのー、保育園でたくあん作りをしたいので教えに来てもらえませんか」
福岡県大野城市の南ケ丘保育園で調理を担当しておられる川田幸子さんから電話がかかってきました。
「たくあんを作って、どうするんですか」
「実は卒園する年長組さんたちにたくあんを漬けてもらって、それを卒園記念にしようと思いまして」
定員約190人の同園の保育方針は「目や耳や鼻や手や舌の五感を使って体験できる機会を最大限に保障し、人間形成の基礎をつくること」。園長の神代郁子さん自身が半断食道場に通った経験などをもとに、8年ほど前から、玄米中心の食事を取り入れています。
きっかけは、入園児にアトピーやアレルギー、中耳炎などが増えてきたことがあるそうですが、同園の特徴は、ただ単に体にいいものだけを食べさせておけばいいというのではなく、作るところから五感を使って体験させ、命のつながりや循環を気づかせようとしているところ。小さいながらも農園があり、生ごみリサイクルで、土作りから種まき、収穫までの一貫した野菜作りをさせています。
そこで活躍しているのがむすび庵の元主婦研修生の伊東康予さん。農業大好きの伊東さんは仕事の枠を超えて園児たちに、野菜や畑の生き物に触れさせたり、その様子を通信にして発行したりと大活躍です。
こうした経緯があってのたくあん作り。私は漬物作りを園児に教えたことなどないわけですから、どうすればいいのか不安でしたが、案ずるより産むがやすし。年長さんたちが元気いっぱいでやってくれました。
驚いたのは、たくあんに使う米ぬかがどういうものかちゃんと知っていたこと。大人でも怪しい、稲、もみ、玄米、白米の関係が理解できているのです。日ごろからの取り組みの成果に違いありません。
こうして2―3カ月熟成されたたくあんは、きれいにラッピングされ、首にはちょうネクタイまでしてもらって卒園証書のひとつとして渡されました。まな板、包丁、切ったたくあんを入れる容器もプレゼントされ、卒園児がうちに帰って、得意そうにたくあんを切って親に食べさせている様子が目に浮かびました。
若年層には「くさい」と嫌われがちな漬物ですが、子どもたちは大好き。ちなみに、ここの園児の大好物は「サバのみそ煮」、おやつは「玄米焼きおにぎりのみそ味」。どこかおじさん風ではありますが、なんとも頼もしい限りです。
モノやお金は使い切ったらそこでジ・エンドですが、たくあんを作る技術や保存の知恵、生活習慣は一生もの。それこそが、私たち大人が子どもに残すべきもののように思えます。
(福岡県筑紫野市「むすび庵」庵主)

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