
神様からの贈り物・里親土井ホームの子どもたち
■「内面の復元力を信じて」
北九州市若松区の里親、土井高徳さん(54)が、児童虐待などで心に深い傷を負った子どもたちとの暮らしをつづった「神様からの贈り物 里親土井ホームの子どもたち」を出版した。土井さんは本紙生活面で「土井ホームの子どもたち」を連載中で、読者から大きな反響があり、掲載1周年を機にまとめた。ホームでの生活を通して、子どもたちが希望を見いだし、回復していく様子がつづられている。 (簑原亜佐美)
土井さんは、天理教の分教会長をしている。熊本大学卒業後、不登校の子どもたちの養育に取り組むようになり、2002年、国の制度である「養育里親」になった。
「知識をさらに深めたい」と03年、北九州市立大学大学院に入学、臨床教育学を専攻し、現在も博士課程に在籍している。専門知識をもとに、国内ではまれな「治療的里親」として活動している。「土井ホーム」では現在、4人の中高生が暮らしている。
連載は昨年4月スタート。本は、連載で紹介し切れなかったエピソードを加筆し用語解説も豊富に掲載するなど、充実した内容になっている。
ある少年は、親から激烈な「養育放棄(ネグレクト)」を受け、公園の水道水を飲んで生き延びた。親が生活保護費をギャンブルに充てたため、給付停止に。周囲は少年の保護を親に提案したが、かたくなに拒否された。「飢え、栄養失調…。豊かな日本に今なお存在する貧困がある」と土井さんは力を込める。
「子どもたちは、二重三重の苦難に直面し、心に深い傷を負っている。傷を『内在化』させ、睡眠障害や病的解離など、精神的な症状を見せる子もいれば、『外在化』させ、暴力や非行に走る子もいる」
子どもたちは「問題行動を繰り返す」と受けとめられてしまい、児童養護施設などでもうまく人間関係を築けず、行き場を失っているのが現状だ。
「どの子も内面に復元力を秘めている。そのことを本を通じて伝えたかった」。土井さんは、具体的な接し方や治療的ケアを多数紹介している。
例えば、刺し身が泳ぐほどしょうゆをかける子どもには、「いっぱいかけたらダメ」としかるのではなく、「1、2、3とビンを傾けたらいいよ」と具体的に教える。「お風呂を見ておいで」と言ったら、浴室をじっと見つめる子どもには、「浴槽にお湯がたまったか見てきなさい」と話す。
(1)複数の指示を同時に出さない(2)日課やルールは張り紙にして明示する(3)スケジュールはできるだけ変更せず、変更する際は早く指示する-などが大事という。「安心、安全が確約された家で、24時間の生活を通して、子どもの心を解きほぐしていく。忍耐の連続だが、その子なりのペースで、自己コントロールや自己モニター(監視)の力を身に付けていく」
厚生労働省によると、社会的養護が必要な子どもは全国で約4万人。施設養護が中心で、里親委託率は9.4%(06年度)だ。国は家庭的養護の推進に取り組んでおり09年度、小規模住居型の「里親ファミリーホーム」制度を新設する予定だ。土井ホームのようなグループホーム型の養育に注目が高まっている。
「1人で抱え込まず、専門家と連携し、チームで臨むことが大切」と土井さんは言う。土井ホームには、精神科医や臨床心理士など約15職種の支援者がいる。「専門家を探すことは大変で、里親制度を普及させるためには、関係機関による情報提供など、支援が欠かせない」
四六判。税込み1680円。福村出版=03(3813)3981。
=2008/06/10付 西日本新聞朝刊=