
「動物は思ったより造形として新鮮だった」と語る松岡勇樹さん

段ボールでできた「d-torso」。断面の波模様も魅力のひとつだ
大小さまざま、複雑な形に切り出された段ボールを組み上げる。パーツの重なりから姿を現すのは、マネキンや動物たちだ。梱包(こんぽう)資材の印象は薄れ、まるで現代美術のたたずまいさえ感じられる。
設計者の松岡勇樹さん(46)=大分県国東市=の肩書は「アーティスト」を名乗らない。「肩書は一般的には『社長』、意識的には『建築家』です」。確かに、段ボールで作る立体造形物「d-torso」を生み出すまで、東京で建築設計の仕事をしていた。しかし、建築と段ボール造形、どうにも結び付かない。
鍵は「断面」と言う。「強度を考えるため、建築物を断面でとらえるのは建築家にとって通常の発想」。最初に作ったマネキンは、人体を断面で分析してデッサンし、段ボールで再構築した。パソコンでデザインする今も、基本構造は変わらない。「建築の延長線上にある」と語る理由だ。
15年ほど前、ニットデザイナーである妻の展示会に、「面白いマネキンを」と考えたのが始まり。軽くて、安く、加工しやすい-。条件を満たすのは「段ボールの他に考えられなかった」。現在はレーザー加工する細かいパーツも、最初の約20体はすべてカッターで切り出した。
無表情な段ボールが、断面を生かすと自由な曲線を描く。金属のように型を作らなくても、データ一つあれば大小自由に成形できる。「自由な造形の可能性」を確信し、1998年に「アキ工作社」を起こした。
その後、大きく展開したのが動物シリーズ。イヌ、ネコ、ブタと続き、「犬段」「猫段」とネーミングも愉快。大きさも、手のひらに乗るミニチュアから高さ約5メートルのキリンまで。昨年末からはディズニーと契約で、ミッキーマウスなどが仲間入りした。
「会社自体も一つの建築物です。収益性を確保し、人材を育てる。モノ、人、カネのバランスを取って会社をつくっている」
設計から生産、発送までを行う工場は、海を臨む国東市安岐町にある。20年近く暮らした東京を離れ、2001年に古里へ移り住んだ。「自然の中で仕事をしたい」という願望を「他が追いつけないことをやっている」という独自性への自信が後押しした。
「建築家」であり続ける松岡さんが「建築の世界では感じられなかったこと」を教えてくれた。
「そこに行かなければ、出会えないのが建築。プロダクト(製品)は、行く先々で予測しない広がりをつくってくれた」。国内だけでなく、欧米や韓国でも販売している。今日もどこかで、存在感を放っているはずだ。新しいファンを魅了しながら。 (畑中知子)
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▼まつおか・ゆうき 大分県安岐町(現・国東市安岐町)生まれ。武蔵野美術大大学院修了。1998年にアキ工作社を設立し、「d-torso」の設計、制作を行う。2001年度グッドデザイン賞を受賞。05年に第2回大分県ビジネスプラングランプリ最優秀賞受賞。製品はインテリア雑貨のセレクトショップ、美術館、動物園での販売のほか、通信販売も行う。アキ工作社=0978(66)7336。
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