
雨上がりの庭でハーブをつむ嶋本さん。「雨の後は特にハーブが香り立つんです」
雨上がりの午後、JR北鎌倉駅から寺を横目に歩いていくと、ふわっと優しげな香りが鼻に届いた。香りの先には、野趣あふれる庭があった。
嶋本静子さんがここに「香り仕事」を構えて11年。ハーブを素材とした商品を売るだけではなく、約70坪の庭でハーブを育てている。季節ごと、さまざまな香りを放つハーブは年間で約50種類ほど。無農薬ゆえ、虫もつけば、雑草も邪魔をするが、手間をいとわず手入れしている。「既に商品になっているものや乾燥ハーブではなく、自然のハーブそのままを見てほしいと思ったんです。ちょっとやりすぎて、自然に茂り過ぎてますけど」。着物姿で迎えてくれた嶋本さんは、そう言って笑った。スペアミント、アップルミント、レモンバーム、レモングラス…、素人目には雑草と見分けがつきにくいハーブも次々と摘んでいく。店の自慢の一つが、摘みたてのハーブティーだ。
ハーブとの出会いは約30年前。父のアメリカ旅行に同行した際、ある家庭のガーデンパーティーに招かれた。庭で摘んだ緑の葉を、サラダに入れたり、肉に付け合わせたり。「見たことのない香草。後から思えばバジルだったんですけどね。日本にはシソやミョウガがありますよ、なんて話しました」。帰国後、バジルとシソの種を交換した。まだ日本ではハーブはあまり知られてない時代。米国や英国の専門書を取り寄せ、熱心に独学で知識を得た。

庭で摘んだハーブを使った生ハーブティーやコロン、軟こうなどのオリジナル商品
そのうち「ポプリ」や「アロマセラピー」という言葉が国内でも広がり、90年ごろから公民館などで香りの講習会を始め、専門学校の講師も務めるようになった。より深い知識を求め、調香師養成の学校にも3年間通った。
「とにかく香りが好き」という純粋な気持ちで、徹底的に香りを学んできた。店の人気商品、天然ハーブを最大11種類使ったオリジナルのコロンは自信作だ。「イメージした理想の香りをどう形にするか。それには自信をもっています」
「香り仕事」という店名にはこだわりがある。
「売るだけじゃなく、お客さまと一緒に香りの品物を手作りし、不眠やアトピーの相談にも応じてます。香りを通じて、癒やしというか、何かほっかりしたものを与えてあげたい。だから香り仕事、なんです」
ハーブとは「人間にとって、役に立つ香りがある草」だという。古代から、香りは人間のそばにあった。気持ちをリラックスさせ、リフレッシュさせ、殺菌に使ったり。「昔から人と香りは協力してきたんです。体や脳に取り込んで、美しく豊かに暮らさないと、香りに申し訳ないでしょ」
夕暮れの庭を眺めながら、ハーブティーをいただいた。胸いっぱいに香りを吸い込み、ほっかりとした気持ちになった。 (東京報道部・塚崎謙太郎)
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▼しまもと・しずこ 福岡県久留米市出身。東京女子大卒。学生時代から趣味で読み込んできた「万葉集」や「源氏物語」を、香りを切り口に読み解く教養講座は10年以上続く人気講座。著書に「香りの源氏物語」(旬報社)。「香り仕事」はJR北鎌倉駅から徒歩5分。水-日曜日の午前10時45分―午後5時半に営業(5、6、11月は無休)。同店=0467(22)6478。
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=2009/11/08付 西日本新聞朝刊=