
お気に入りのランプに明かりを灯し、笑顔を浮かべる松本雅代さん(左)とニョマン・サカさん。「明かりをつける瞬間が一番楽しみ」

ひょうたんの穴からこぼれる光は影絵のように広がる
もしも気持ちに形があるのなら、このランプを見た人の気持ちは、きっと丸くなるに違いない。スイッチを入れた瞬間、ひょうたんに開けられた無数の穴から柔らかい光がこぼれ、暖色の優しい空間が広がる。
松本雅代さん(35)がひょうたんランプの制作を始めて11年。今でも、スイッチを入れる時に心がときめくという。「想像以上の光と影が広がる瞬間に出会えるんですよね」
ひょうたんの形や厚みによって、明るさや影の出方は異なる。穴の連鎖で描く模様は形に合わせて決める。一緒に制作する夫のニョマン・サカさん(30)は「同じ物はできないから、ひょうたんの形を生かしてあげたくて」と語る。唯一無二の作品は、どれも2人にとって子どものような存在だ。
「興味を持ったら、後先考えずに行動しちゃうんですよね」。松本さんは高校卒業後に進んだ看護学校を中退。20代前半はヨーロッパを放浪して過ごした。ユニークなランプを考案したのは帰国後、沖縄に長期滞在していた1998年。ひょうたんで何か作ることを思い立って細工を施したところ、好評を得た。
2002年に創作の場をインドネシア・バリ島に移した。「着替えも持たず、ひょうたんだけ30、40個持ってですね、行っちゃったんですよ」。現地でサカさんと知り合い、04年に結婚し、熊本県植木町にある松本さんの実家に戻った。
2人がデザインする模様は、それぞれの個性が反映されている。松本さんは好きな絵本や童話の世界を投影した動植物が多い。一方、サカさんは、故郷・バリ島の伝統的な文様や細密画の影響を色濃く受けている。
ランプづくりは、春の種まきから始まる。畑の管理は松本さんの両親が担当。地元のひょうたん愛好家が栽培法を助言してくれたり、周囲のスイカ生産者が畑を耕してくれたり。「放浪中もそうでしたけど、どこにいってもみんな親身になって助けてくれるんです」。松本さんは人懐っこい笑顔で感謝する。
1年前から、隣町にある障害者施設の通所者と交流を重ねている。通所者が穴開けや下書きに加わり、新たな個性を持った作品も生まれた。
「小さなランプなんですけど、たくさんの人の温かい手で作られているんですよ」と語る松本さんの隣でサカさんがほほ笑む。ほんわかした2人に周囲の人々がつながり、一粒の種が人の心まで優しく照らすようなひょうたんランプへと育っていくのだろう。
(佐々木直樹)
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▼まつもと・まさよ/ニョマン・サカ 松本さんは1974年、熊本県植木町出身、サカさんは79年、インドネシア・バリ島出身。独学ながら完成度の高さが評価され、ひょうたん愛好家が集う「全国愛瓢会(あいひょうかい)展示会」で、松本さんが2001年に農林水産大臣賞を受賞。現在は全国で二人展を開催している。個展の情報や、ひょうたんランプの購入については公式ホームページ=http://www.hyoutanlamp.com/
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