
城南団地の公民館で開かれた朝市。大勢の住民でにぎわう=11月17日午前、大分市永興
「これは、どげんして食べるとやろか」
高齢の女性客が野菜片手に店員に声を掛ける。居合わせた生産者や他の利用者も一緒になってレシピを教えあう。店内が話し声でにぎわう、いつもと変わらない1日が始まった。
JR荒尾駅から車で10分ほど南に位置する熊本県荒尾市の中央商店街。金物店や写真店などの店主5人で始めた農産物直売所「青空研究室(青研)」が午前9時に開店した。一人、二人と高齢者が立ち寄る。
1日当たりの利用者数は140―200人。昔の顔なじみと会うのを楽しみに日に2度、3度と来店する人もいる。ほぼ毎日買い物に来るという女性(70)が誇らしげに話す。「ここにくれば笑い合える楽しみがあると」。青研は高齢者にとって買い物の場にとどまらず、地域コミュニティーの復活に一役買っているのだ。
バブル絶頂期の80年代後半には30店舗を超えていた中央商店街だが、現在営業しているのは十数店舗。生鮮食料品がそろう店舗は、青研ができた2005年まで、10年以上も無かったという。
商店街の周辺住民の多くは、約1キロ先のショッピングモールを利用している。車を運転できない高齢者にとって、1キロは気軽に行き来できる距離ではなかった。
「あんたたちは良かことをした」。青研が開店すると、来店する高齢者はスタッフに感謝を口にした。田尻幸恵店長(40)は「レジでお客さんから『ありがとうございました』って言われるんです。普通は逆ですよね」と笑う。
荒尾市内では3年前から、青研と同じように空き店舗や倉庫を活用した“ミニスーパー”が3店舗できた。いずれも高齢者をメーンターゲットにし、一人暮らしの高齢者向けに1人用の手作り総菜を販売する。ニーズに応じることで一定の売り上げを維持し、行政の補助金などに頼らず、運営を続けている。
荒尾市の3店舗の取り組みと成果は、高齢化や中心市街地の空洞化の問題を抱える他の自治体からも注目を集め、多い時は月に6回、視察団が訪れる。
熊本県も昨年から、ミニスーパー事業を「徒歩圏内マーケット」と名付け、開業を促すマニュアルを同県ホームページで公表。県内外への普及を目指す。
商店街の衰退や地域スーパーの撤退などで、歩いて生活必需品を買いに行けない問題が各地で深刻化している。今は車で買い物に行ける世代も、将来は「買い物難民」になる可能性は否定できない。
「買い物難民 もうひとつの高齢者問題」の著者、杉田聡・帯広畜産大教授(56)は「商店主や行政など一部の人だけが頑張っても問題は解決しない」と強調。「地域の小さな商店を社会資本として残す意味を市民が自覚し、行動することが大事」と、地域全体で地元の商店を支える必要性を強調している。
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●こちら取材班
九州各地で多くの外国人が働く時代になりました。農業に従事する人、居酒屋やコンビニでアルバイトする人、介護現場で研修を受ける人…。外国人労働者との触れ合い、交流に関する情報や体験談をお寄せ下さい。
=2009/12/19付 西日本新聞朝刊=