
「抱きやすい形になっているので、赤ちゃんも大人も緊張しなくてすむ。いつも安心して抱っこしてもらえます」と岡田洋子さん(左)

生まれてくる赤ちゃんのために、トッポンチーノを手作りする参加者たち。3時間ほどで完成する=福岡市中央区那の川
トッポンチーノ。思わず声に出して読んでみたくなる名前。正体は、イタリア生まれの新生児用の小さなお布団。日本でいうおくるみに近い。縦65センチ、横40センチほどの楕円(だえん)形で、生後まもなくから8カ月ごろまでの赤ちゃんをふんわり包み込む。岡田洋子さん(42)は2008年9月から、福岡市内でトッポンチーノ作りの教室を開いている。
国内では聞き慣れないこの布団の最大の効果は、赤ちゃんへの安心感という。首のすわっていない赤ちゃんでも抱っこしやすくなり、そのまま置いて寝せることもできる。使い続けるうちに、布地に母親や赤ちゃん自身のにおいが移ることで、母親以外の人が抱いた時も、赤ちゃんに安心感を与えるという。
体臭を嫌い、無臭を志向する現代の風潮に逆行するように、においに「絆(きずな)」を見いだす。自他共に認める「においフェチ」という岡田さん。「機能性以上に、本能的にひかれるんだと思うの」
トッポンチーノは、20世紀初頭にイタリアの教育者・モンテッソーリが考案した教育法で取り入れられている。岡田さんは第2子を妊娠中の01年、長女が通う保育園で教えてもらい、初めて作った。
生まれた長男をトッポンチーノごしに抱いて寝せた後、そのまま置いても泣かれることが減った。背中が常に同じ状態のため、置かれても違和感を感じないからだと分かった。「『起きないかな』という不安感が減って、精神的にだいぶ助けられた」
その後、妊婦の知人に作り方を教え始めた。少女時代、福岡県出身のポップスグループ、チェッカーズにあこがれ、おそろいの服を作ったほどの裁縫の腕前が役立った。
なぜそこまでのめり込んだのか。「赤ちゃんの代弁者、みたいな感覚かな。生まれたての人の気持ちにもっと寄り添ってもらいたいと思って」。材料はすべてオーガニックコットンを使用。形状も今の形に落ち着くまで試行錯誤した。すべては赤ちゃんの気持ちを優先した結果だ。
教室を始めた当初は参加者が集まらずに中止したこともあったが、今はほぼ毎週1回開催している。最近は「お嫁さんや娘さんに贈りたい」という女性が急増している。
「お祖母ちゃんは子育ての経験があるので、すぐにぴんとくる。これがあったら子育てしやすかったやろなって」
材料の販売を求める声も多いが、1カ所に集まって、みんなで作る形式を続ける。「一番やりたかったことなので。育児は孤独になりがちでしょ。顔を合わせて話す楽しさを味わってほしいの」
完成までは約3時間。初めて会った参加者の間で徐々に会話が生まれる。相談だったり、愚痴だったり。「新しいつながりが生まれることに期待したいんです」
トッポンチーノ。母子だけでなく、人との絆を深める時間を与えてくれる“おまじない”のようでもある。
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▼おかだ・ようこ 1967年、佐賀県唐津市生まれ。第2子、第3子をトッポンチーノで育てた実体験を基に、大勢の人に広める活動「わたしのトッポンチーノ」を主宰している。2008年9月から定期的に開いている教室は、作り方の指導にとどまらず、似た状況の人たちが集い、語り合う場にもなっている。教室に参加できない人のために完成品の販売もしている。ホームページアドレスは
http://www.topponcino.com
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=2009/12/20付 西日本新聞朝刊=