
季節と展示空間を考慮して、よりあざやかな構図を生み出していく

ラン科の素材とミニトマトを組み合わせた作品

手製の花器にオーニソガラムとキクをあしらった
ユーモラスな表情のだいだい色の植物は、ナス科のフォックスフェイス。赤い唐辛子と青色に加工したツツジの強烈なコントラストの下から、大輪のカサブランカが顔をのぞかせる。福岡市・天神の地下スペースで開かれた展示会。素材と色彩の鮮やかで大胆な組み合わせが、買い物客の足を引き留めた。
「現代の生活環境に合った色づかいや色合わせを楽しみたい」。華道家、後藤晃毅さんはまだ27歳。作品はポップでモダン。華道の世界に清新な風を吹き込む新鋭だ。
「花には最も美しい角度がある。それは、太陽の方向をまっすぐ見ている状態。だから、ぼくは見る人を太陽に見立てて花を生けたいんです」。展示場では、ハサミを手にいくたびも作品の構成や角度を確認し、アレンジした。
障害物にぶつかり、風に曲げられても、花は太陽に向かって咲く。草花に息づく太陽への指向、そんな“生命の声”を意識することは、師匠である祖父や父から受け継いだ信念だ。
祖父が創始した華道「草真流」の三代目。「花形から美を求めるのではなく、植物のもっている美を引き出すこと」を旨とし、「人と自然の和、人と人の和、人と花の和」を重んじる草真流の哲学は、幼いころから繰り返し説かれ、体に染み付いている。
福岡教育大時代に華道家の道を本格的に意識しはじめた。美術の教師免許を取得する傍ら、花器の創作を手掛け、“残る芸術”である陶芸と異なり、華道が“瞬間の芸術”であることをあらためて知った。
「花を触ると水分や弾力、温度などの状態が即座に伝わってくる。どのくらい、どういう状態で生きてくれるか、どう枯れてくれるか。それぞれの素材が持つ時間と時間の組み合わせの美が、華道といっていいかもしれません」
祖父から父を経て伝えられた教えを基本に、若い後藤さんが目指すのはより今の生活に密着した、洗練されたフォルムの生花だ。ファッションや映画から発想を得ることも多く、絵本作家など他のジャンルのアーティストとのコラボレーションも意欲的に取り組む。
「花を生けることはマスを埋める作業ではなく、余白をいかに見るかということ」「空間のゆとりは、見る人の心地よさにつながるんです」。華道の神髄を語る言葉には果てがない。だが、福岡市・天神や早良区百道の教室などで生け花を教える時に繰り返し強調するのは「水をまめにかえる、器をきれいに洗う、といった基本の重視」という。その姿勢は凛(りん)とした暮らしの在り方に直結する。
現代生活にもっと寄り添った華道を。若き華道家の精進の日々は続く。
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▼ごとう・こうき 1982年、福岡市生まれ。華道草真流の二代家元、覚徹氏の長男。福岡教育大で美術教育を学び、卒業後、本格的に華道の道へ。「福岡国際蘭展」や「全日本いけばなコンクール」などで受賞多数。草真流家元道場=092(821)2676。
=2009/12/27付 西日本新聞朝刊=