
「子どもたちといる仕事自体は面白い」と話す2人。授業には自作のプリントなどを用意する
「ちょっとホームシックです」とオーストラリア人のジェシカさん(29)=仮名=は、肩をすくめた。来日から2年。福岡県内の高校で外国語指導助手(ALT)として働いていたが、昨年夏に英会話学校の講師に転職した。ジェシカさんの応答はすべて英語で、隣に座る夫のルークさん(29)=同=が通訳してくれた。「勉強しなければ、とは思うけれど。難しい」。彼女の言葉が途切れた。
高校でALTとして働いているルークさんは母が日本人で、父はカナダ人。3歳で日本を離れ、オーストラリアに移り住んだ。ある程度、日本語を話すことができる。「言葉がうまくいかないから、奥さんは日本で暮らすのがつらそうです」。夫婦で日本で暮らすことを提案したのは、意外にもジェシカさんだった。
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4年ほど前、2人で日本を旅した。ジェシカさんにとっては初めての外国。寺や神社を巡り、日本食を堪能した。「なにより、生まれて初めて、雪が降るのを見たのが思い出です」。声に明るさが戻る。ルークさんにも「母と同じ文化を経験したい」という思いがあった。
福岡に来て約1年。2人が感じている日本との距離はかなり異なる。
父母の国籍が異なり、インターナショナルスクールに通ったルークさんにとって、「外国人を“違う人”と意識する方が難しい」。毎年のように、祖母が住む日本を訪ねていたので、「日本人が外国人を特別に扱うことは、だいたい想像できていた」とも語る。何より、日本人と不自由なく会話ができる。
一方のジェシカさん。「オーストラリアでも、いろんな国の人がたくさん働いているけど、日本は違った」。ブロンドの髪、緑がかった瞳を持ち、長身の彼女は人目を引く。「じろじろ見られるのが一番嫌」とまゆを寄せる。「私は今、アウトサイダー(部外者)だと思う。日本人と同じように受け入れられることはないと分かってきた」
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日本人の教諭とともに教壇に立つALTの世界では、社会保障が整った外国青年招致事業(JETプログラム)だけでなく、業務全体を民間業者に委託する方式が広がっている。
ジェシカさんも人材派遣会社に登録していたが、往復4時間の通勤に疲れ、昨年5月に退職を願い出た。最後の給料から違約金などを天引きされた。弁護士や労働組合に助けを求め、労働基準監督署に不当性を訴えた。是正指導を受けた派遣会社は約20万円をジェシカさんに返還したが、解決までに約半年かかった。「外国人だから、法律が分からないと思われたのか」。憤りは消えない。
今もALTを続けるルークさんの契約期間は1年。年度末の入札で、派遣会社が委託業務を落札しなければ、春から仕事はない。オーストラリアではIT関連企業で働いていたが、「漢字ができないから、日本で同じ職を探すのは難しい。ALTや英会話講師など、選べる職業はわずかです」と語る。
慣れない生活習慣、言葉の壁、不安定な就労…。ルークさんは妻を気遣い「あと1、2年で帰るかもしれない」と明かす。壁を打ち破ることができるのか、アウトサイダーのまま日本を去るのか。2人の心はまだ決まっていない。
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▼外国語指導助手
地方自治体の外国青年招致事業(JETプログラム)は、1987年に始まり、来日する外国人の大半が外国語指導助手(ALT)として、全国の小中学校や高校に配属される。給料は年360万円(税引き後)で、赴任時と帰国時の旅費が支給される。2008年には38カ国の約4700人が参加した。文部科学省の調査によると、ALTを活用する小学校のうちJETプログラムによるものは約21%(08年度)。その他は、各自治体の直接雇用や、民間への業務委託などによるALTが活動している。
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