
突板(つきいた)や有田焼の照明もデザインしている中庭さん
ある日、長崎県対馬市に住む母親が「スタンプの景品カタログに、あんたのティッシュケースが載ってたよ」とうれしそうに電話してきた。
「あんた」とは中庭日出海さん(28)=福岡市南区。「こうやって時々、自分のデザインに不意に出合うのはおもしろい」
どこかに住むだれかが、スーパーで買い物してこつこつためたスタンプで、このティッシュケースを手にしてくれる。自分が考えたものがかたちになって、その人の生活の中にそっと入っていく。そしてその人の生活がちょっとだけ変わる。「そう考えるとどきどきする」という。
プロダクトデザインは「製品デザイン」と訳される。家具や日用雑貨など、工業生産と結び付いた量産品のデザインのことだ。当然、実用的でなければいけない。

紙箱を隠すようにデザインしたステンレス素材のティッシュケース
例えば中庭さんのティッシュケース。ステンレス1枚をくるっと曲げて、斜めに置いたかたちをしている。多くの場合、ティッシュケースは机の端に置かれ、上に引き出すように取る。中庭さんは「どうせ端に置くなら背面が見えてもいいし、斜めにした方が引き出しやすい」と考えた。
これまでティッシュケースは覆うことが前提で、どうしても四角い「箱」の意識が残っていた。「だから、覆う、より、隠すという感覚のものがあってもいい」と思った。さらに、一枚板だと溶接が不要になり生産性が高まる。

45度にカットした部分を根元に挟むと簡単に開けるしおり
実用性、生産性、そして新しい感覚。「さまざまな問題を、一つのシンプルなかたちや素材ですこーんと解決する」。毎回新しいことに挑戦できる。そんな仕事がおもしろくてたまらない。
高校時代は、介護の道を目指していた時期もあった。自分が何をしたいのかよくわからない。親に言われるまま、福祉系大学への推薦が決まっていた。このままではいけない、と高校の進学資料室で何げなく手に取った赤い背表紙の冊子は、福岡デザイン専門学校の募集要項だった。「だれもが使いやすい物を作ることも福祉なのでは」と考えるようになった。
そんな思いは最近デザインしたしおりにも表れている。先を45度にカット。本の根元に挟んでも開く場所は根元から離れているため、ぐっと力を入れなくても開ける。同時に、本への負荷も小さい。
物があふれる現代の日本。友人たちと買い物に行くと、その場で買うので「もうちょっと考えてよ」とこぼす。デザイン都市、イタリア・ミラノの人たちは、気に入る照明が見つかるまで裸電球で過ごすという。自らの基準で日々を楽しむ暮らし。「そんな価値観をデザインしたい」と思っている。
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▼なかにわ・ひでみ 長崎県対馬市出身。富山プロダクトデザインコンペ最高賞など受賞多数。2007年には国際家具見本市ミラノサローネの若手コンペ・サテリテに出展。4人のデザイナーによるヨンイチデザインストアをインターネット上に開店。なかにわデザインオフィス=092(552)2789。
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