
苔盆栽の手入れをする島津拓哉さん
ジーンズにトレーナー、足元はカラフルなスニーカー。島津拓哉さん(25)の第一印象は、「苔(こけ)盆栽作家」という肩書が醸し出すイメージからあまりに遠い。髪の毛立ってるし…。「拓哉と盆栽、合わせて『TAKUBON』って呼んでます」。「TAKUBON作家」。なるほど、これならしっくりくるかも。
樹木の足元にコケを植え込んだスタイリッシュな苔盆栽。19歳から3年間、兵庫県の盆栽作家のもとに通い詰めて勉強した。母は花も使う空間プロデューサー、兄は華道家という環境があるにせよ、なぜ苔盆栽なのか。
「きっかけは、母が請け負った飲食店に飾った小さな盆栽。手伝いで通っていると、変化していくんです。だんだんと石に生えてくるコケは、ほかで見たことがない緑色。神秘的な魅力にほれました」
一口にコケなんて言わないでほしい。種類は1700以上。「それぞれ、緑の色とかつやとか違うんですよ。それって絶対、人に作れるもんじゃない」

盆栽に敷き詰められたコケの〝花〟
一つのコケでさえ、見つめ続ければ、変化に出合える。「四季で緑は濃さを変えてます。ほらここ」と指したマツの根元で、コケがうっすら茶色がかっている。「枯れてると思い込みがちなんですけどね」。ピンセットをそっと差し入れると、白いものが顔をのぞかせる。「新芽です。もうすぐ緑になって出てくる」
もちろん、樹木も折々の表情を見せる。生け花のように、縦に流れるラインが特徴の一つだ。力強く広がる枝ぶりが評価される伝統的な盆栽の世界にあって、高い品評を期待できる作風ではないという。だが「もっと自由でいい。正解はないから」と意に介さない。

盆栽に敷き詰められ、青々と茂るコケ
取材で訪れた常設のギャラリーは、オープンから1年近くたつ。白を基調とした空間では、現代的なインテリアと盆栽が驚くほどマッチすることに気づかされる。「置く場所を想像して作る」という作品は、北欧インテリアのショップに並んだこともある。
ギャラリーのねらいがもう一つ。「展示会やってたんだけど、僕が手放した後も変化していくものに、無責任じゃないと思って」。展示会では作品を売る場に立ち会えないこともある。結果、特性や手入れ方法を十分に伝えられず、枯れた作品と再会したこともあった。「ここをアフターケアができる場所にしたい」。盆栽は何百年もかけ、人の手から手へ渡る。「ずっと完成しないですよ。動いていく。生きてる」
春に向けた制作も始まった。「木の根が動きだすころが、僕も一年で一番のってる」と笑顔がのぞく。今年は、5年ほど前に種から植えたマツやモミジを、初めて作品に仕立てる予定もある。木々が芽吹く春はもうすぐそこだ。
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▼しまづ・たくや 1984年福岡市生まれ。18歳で苔盆栽の制作を始め、福岡県内を中心に、陶芸作家や書道家とのコラボレーションなどで展示会を開催。昨年4月、同市中央区に開いた「ぎゃらりぃ島津」に自身の作品を常設し、展示会の企画も担当する。同ギャラリー=092(532)9980。
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