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【暮らしの美】山の恵みを丸ごと家に 古民家再生 松尾進さん(佐賀県鹿島市)

2010年09月05日 23:21
「古民家では人が自然の一部だと実感できる」と語る松尾進さん=再生された佐賀市の古民家で
「古民家では人が自然の一部だと実感できる」と語る松尾進さん=再生された佐賀市の古民家で
 再生を依頼された古民家を訪ねるたびに、その造りに心動かされる。「力強さと優美さを兼ね備えている」と松尾進さん(57)=佐賀県鹿島市=はつくづく思う。どの角度から見ても、どれだけ見続けても、飽きることはない。
 最近手掛けたのは、佐賀市にある築140年の商家。天井には曲がり材を使ったさまざまな梁(はり)が、縦に横にしっかりと組まれていた。現代の建築では、角材を使ったシンプルな造りが主流。対照的に一見粗く武骨な古い建築は、よく見ると適材適所、一本一本の木の特性を理解して作られている。どの木も、長い年月が溶け込んだかのように、濃いあめ色に染まっている。

 「先人の知恵と思いが凝縮している」と感じる。

 家業が材木業だった。18歳で手伝い、19歳で父親が亡くなり跡を継いだ。

再生された古民家では、明治時代のはり(下)と平成のはり(上)が同居している=佐賀市の古民家
再生された古民家では、明治時代のはり(下)と平成のはり(上)が同居している=佐賀市の古民家
 仕事場がある150戸ほどの集落は、半分が築100年以上。材木業者として、古い家の解体や屋根のふき替えなど増改築を手伝ううちに、「かつては一つの山から1軒の家が建てられていた」ということを知る。現代のように、外材や遠く離れた土地から木を運んでくるのではない。強い木も弱い木も大きく曲がった木も、その土地にある山から切り出して、大切に使う。「山の恵みを丸ごといただく家造りをしたい」と考えた。

明治時代のはりにぶらんこを下げた=佐賀県鹿島市の古民家
明治時代のはりにぶらんこを下げた=佐賀県鹿島市の古民家
 材木店は続けながら10年前、工務店「夢木香(ゆめきこう)」を設立した。当時は、化学薬品などによるシックハウスの問題も注目されていた。合板などの新しい建材ではなく自然素材を使い、しっかりした木組みや土壁など伝統的な工法で家を造る。そうした取り組みを進めていくと、古民家の移築や再生の依頼も増えてきた。

 「山の仕事をしていると、人間の力ではどうにもならないことがあると分かる」という。人は自然の恩恵を受けて暮らしていることを、忘れてしまっているのではないだろうか。昔の家にいると、人は自然の一部なんだと感じる。

 佐賀市の古民家では、無用な切り込みが入った梁があった。明治時代の職人が、他の家に使っていた材木を「もったいない」と使い回した証しだろう。江戸時代の木だろうか。そこに自分たちが平成の木を加える。時代を超えた自然と職人のつながりがある。

 その伝統的な技術をもつ職人たちが、急速に減っている。この30年ほどで家造りが簡素化されたためだろう。台風や梅雨があるこの日本で、何百年ももつ家を造る技術は世界に誇ることができるのに。「あと10年が勝負」と、若い職人に伝承している。

 丈夫な木は、伐採してから200、300年かけて強くなり、千年ほどで元の強さに戻っていくという。「百数十年というのはまだまだ途中なんです」。遠くの未来を見つめている。

    ×      ×

 ▼まつお・すすむ 佐賀県立塩田工業高校建築科卒。松尾製材所代表。2000年10月に夢木香を設立。NPO法人「日本民家再生協会」理事。夢木香=0954(69)8333。

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=2010/03/07付 西日本新聞朝刊=
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