
結婚や婚活の特集記事が載った雑誌をチェックする麗子さん
ネイルアートを施した指先が海外ブランドの手帳をめくる。婚活(
注1)の予定がびっしりと書き込まれている。
「34年の人生で今が一番いろいろな人と会っています。本当は初対面の人が集まる場は苦手ですけど、今は自分から動かなければ何も始まらないですから」
麗子さん(34)=福岡市中央区=は昨年末から結婚相手を探すため、週2回のペースで合コンを繰り返している。東京で働く男性との合コンに参加するため、今月は3泊4日の日程で上京する予定だ。
仕事に夢中だった20代。女性の平均初婚年齢28・5歳(2008年、厚生労働省)を超えても、「焦りはない」。恋愛の先に結婚があるという考えは今も変わらない。だが、今は結婚・出産から逆算して相手を探す。
20代で結婚した友人たちを横目に見てきた。夫が失業したり、幼児を抱えて離婚したり。だから、相手に求める条件は20代の時より高くなる。
「仕事はやめたくないから、できれば共働きを認めてくれる人。今の生活レベルを落とさない程度の経済力や包容力を持っている人。恋愛的な相性より、パートナーとしての相性を優先します。失敗のリスクが減るだろうから」
企業が多くの新卒者を正社員として採用していた1990年代半ばまで、職場は一つの「出会いの場」だった。バブル崩壊後の就職氷河期(
注2)とともに、「自分で動かないと出会いがない時代」が到来した。
2002年に、上場企業の福岡支社に正社員で就職した恵さん(31)は「正社員が少ない分、仕事の負担が多いわけで。会社が出会いの場だなんて雰囲気はないです」と話す。
男社会の企業の中で、男性と同等以上に仕事をしてキャリアを突き詰める「均等法世代」(
注3)の先輩と、結婚などやることは早めにやってしまおうという20代の後輩がいる。間の世代である自分はどっちだろう。「自分のなりたい理想像が分からない。20代の半ばまでは専業主婦になりたかったのに、今は違うと思うし…」
28歳で彼氏と別れた後、婚活もした。2月に31歳になった。周りからは、独身生活を心配する声がかけられている。といって、義務感のように相手を探して結婚するのは違う気がする。もちろん、いい人がいれば結婚したい。勢いに身を任せられない気持ちと、「今のままでいいのか、私」という思い。両方の間で揺れる。
福岡市内の地場企業で働く和馬さん(34)は、同世代の女性が婚活にいそしむ様子に冷めた目を向ける。「男は割が合わないでしょう、結婚って。幸せより、リスクの方が大きくないですか?」
20代半ばまで、夫が妻を養うべきと思っていた。就職して11年。年収は300万円台。賃金カットはあっても、上がったことはほとんどない。この先どうなるか分からないと思う。
05年の国勢調査によると男性の30―34歳の未婚率は47・7%。女性は32・6%で、調査以来初めて3割を超えた。和馬さんは当然だと言う。「親は『何とかなる』と言います。でも終身雇用で給料が右肩上がりの時代を生きた人の言葉に説得力ありますか? 世の中が好転するイメージを持てない」
結婚はできるならしたいと思っている。今は共働きが理想。「妻の収入が上でも引け目は感じないです。でも、女性は男に自分以上の収入を求めるんでしょうね…」。昭和的価値観から新しい価値観への端境期を歩いている。
=文中仮名
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バブル崩壊後の就職氷河期を経験した35歳前後の世代が、長引く景気低迷の中で結婚難や雇用不安、収入減などに直面している。将来の国の経済や社会保障を担うことになる団塊ジュニア世代の「今」を探る。
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▼注1 結婚相手を探す「結婚活動」の略。「パラサイト・シングル」の命名で知られる山田昌弘・中央大教授(家族社会学)らが考案、提唱した造語。2009年の流行語大賞にノミネートされた。
▼注2 バブル崩壊後の就職が困難であった90年代前半から00年代半ばの時期を指す。就職雑誌「就職ジャーナル」が1992年に提唱した造語。
▼注3 86年の男女雇用機会均等法施行間もない時期に社会人になった世代。現在の40代半ばが該当する。キャリア志向の女性社員が活躍する場が増えた一方、20―34歳女性の未婚率が高まり、平均初婚年齢も年々高齢化している。
=2010/03/14付 西日本新聞朝刊=