
保育制度改革に反対する集会の後、福岡市・天神の街頭でビラを配る保育士や親たち
福岡市・天神のホールは千人もの保育士や親であふれていた。5日に開かれた新しい保育制度に反対する集会。主催した市保育協会の永野繁登理事長(69)は「なぜ今、こんな制度を採用するのか、理解できない」と言葉を詰まらせた。
懸念する点はいくつもある。その一つが、国が1948年に定めた最低基準。多少は引き上げられたものの「4歳児以上は子ども30人に保育士1人」など大半は変わっていない。むしろ少しずつ緩和されてきた。
その傾向が最近、特に強まっている。昨年11月、東京など一部地域で面積基準が緩和されることが発表された。今年3月には、3歳以上の給食の外注が可能になることも決まった。
集会で登壇した栄養士は「食事は心の栄養でもあるのに」と訴えた。自身が勤める保育所では、調理室から漂うにおいに「今日は何?」と園児が寄ってくる。湯気の立つ手作りの食事。みんなで食べるおやつ。家庭で外食や中食(なかしょく)が進む今だからこそ「第2の家庭である保育所で手作りの食事は必要」と思えてならない。
待機児童を減らすには基準を緩め、多くの子を入所させるか、事業者が参入しやすいようにする-。規制緩和を求める側の理論は、効率的で分かりやすい。
しかし、そもそもこの最低基準は妥当なのか。
例えば、0―1歳には乳児室(1人当たり1・65平方メートル以上)か、ほふく室(同3・3平方メートル以上)が必要とする基準。全国社会福祉協議会が昨春まとめた研究結果では「ほふくなどの空間を除き4・11平方メートル以上が必要」と指摘され、現在の基準は「保育を行うことが不可能という状況ではないが、食寝分離などさまざまな課題がある」と結論づけられた。諸外国と比べても低レベルという。
政府の子ども・子育て新システム検討会議は、保育所を認可制から指定制に変える方針で、4月には客観的基準を設定すると示した。だが、その具体的な中身については、まだ見えない。
認可外保育所に1歳の子を預ける福岡市の母親(38)は、仕事と育児に綱渡りの日々。利用料を節約しようと契約時間をぎりぎりまで短くし、時には同僚に気を使いながら早退する。毎朝作る弁当を、子どもはあまり食べないという。温かい給食があったら…。
それでも保育士が子どもの育ちをよく見てくれることには満足している。基準は必要だと思う。だが「大事なのは先生の質。園庭や調理室がないからといって認可されず、利用料に跳ね返るのはふに落ちない」。
同じ市内にある認可保育所は、基準の範囲内で定員より1―2割増しで受け入れている。それでも待機児童は減らない。「基準はあまりにも低い。最低でも守らなければ」と園長(60)。一方で、一部の子を切ってまで守る基準に意味があるのか。「人を育てられるのは人しかいない。人の基準だけは緩和すべきでないが、待機児童はここ数年がピーク。ひとまず面積基準の緩和でしのぐしかない」
最低基準を上げれば、保育の質は高まるが公費負担は増える。事業者参入の壁も厚くなるだろう。緩和すれば、待機児童は解消するかもしれないが、質が懸念される。私たちは何をどう選択したらいいのだろう。
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▼保育の最低基準
保育所の面積や子どもと保育士の割合などについて、児童福祉法に基づき厚生労働省令で定めている。厚労相には「最低基準を常に向上させるように努めるものとする」、都道府県知事には「最低基準を超えて設備や運営を向上させるよう勧告できる」と奨励している。基準を超えた保育所は認可される。厚労省は認可外向けに、最低基準より緩い「指導監督基準」を設定している。
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