
両立を可能にする子育て支援の必要性を指摘する駒村康平・慶応大学教授
政府の「子ども・子育て新システム検討会議」の議論は、戦後60年以上続いてきた保育の仕組みを大きく変えようとしている。なぜ今、改革が必要なのか。同会議に先立ち、有識者らが議論した厚生労働省・社会保障審議会少子化対策特別部会で委員を務めた駒村康平・慶応大学教授(社会保障)に、検討されている新制度の方向性について聞いた。
-なぜ今、制度の見直しが必要なのか。
出生率と女性の就業率の引き上げが狙いだ。国が5年ごとに年金財政の現況や見通しを作成する「財政検証」は、2009年版で「制度の維持が可能」と結論付けた。ただし「30年までに既婚女性の就業率が15―20%増加する」という前提があった。この前提は現実的なのか。
この20年、有配偶女性の就業率はほとんど上がらず「仕事か育児か」の選択が続いてきた。今後、出生率を下げずに就業率を上げるには、保育所の確保が不可欠だ。潜在的な待機児童も含め、50万人分くらいが必要だろう。特に考慮すべきは、人口の多い団塊ジュニア世代が出産の適齢期を迎えている点だ。両立を可能にする子育て支援の整備は、ここ数年の急務である。
-安定的な財源をどう確保するか。
保育サービス政策は、国全体で進める必要がある。一部の自治体が力を入れても、人口の移動が起こるだけで国全体の出生率引き上げにはつながらない。また、一般財源化してしまうと介護サービスなど他の政策が優先される懸念もある。
新制度では、従来のひも付き補助金や一般財源ではなく「子どもに使う」という“色”付き交付金を地方に渡すよう検討している。
企業や国民も負担し、国と地方の税金も集めた「基金」で支える。企業はこれまで雇用保険や育児休業のために要してきた拠出金を、そのまま基金に移す。
国民負担は今後、徴収方法の検討が必要だ。税財源が既存のもので足りなければ、消費税の引き上げなども考えねばならない。
-地方によって格差が生じる懸念もある。
子どもに必ず使うという色付き交付金なら、ミニマム(最低の水準)は保証される。財政的余裕のある自治体がさらに上積みし、格差が出るのは仕方ない。それでも最低限のレベルは保証されているからだ。
-改革は株式会社など多様な事業者の新規参入を進めようとしている。市場原理を持ち込む是非は。
完全な市場化でなく、公定価格と公費負担は守り、供給主体の多様化だけ認める「準市場メカニズム」が適当だ。新制度も同じ考えに立っている。価格競争を行えば、保育サービスの価格は二極化する。高所得者は高い保育、低所得者はコストを抑えた安い保育を受けるようになり、格差の固定化につながってしまう。
ただ、価格競争をやめて高い質の保育を実現しようとすると、必然的にコストや料金は高くなる。誰でも利用できるには公費負担が不可欠だ。
-これまで市町村は「保育する責任」を担ってきた。新制度で、その責任があいまいにならないか。
現在、市町村に保育責任があるが、実質的に果たされていない。保育所が足りないため、保育サービスの供給量が需要を決めてしまっている。現在は認可制だが、新制度では一定基準を満たす事業者を「指定制」で参入させる。自治体は需要に見合った量の保育サービスを作らせ、提供する義務を負うことになる。指定後は監督義務を負う。
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