シリーズ「わたしたちの九州」の九州縦断バス座談会。鹿児島県鹿屋市串良町の柳谷(通称やねだん)集落から福岡市まで約640キロの道中、参加者は都市の人口過密問題や過疎地の後継者不足、市町村合併など、幅広いテーマで意見を交わした。特集
「九州再発見バスの旅<ツアー前半、ツアー後半>」で書ききれなかったやりとりを詳しく紹介する。
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▼座談会参加者
坂本 休氏(78)大分県旧中津江村の元村長
椎葉壮市氏(71)宮崎県椎葉村のシイタケ農家
豊重哲郎氏(68)鹿児島県柳谷集落の町内会長
徳野貞雄氏(59)熊本大教授(農村社会学)
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●合併デメリット多い・坂本氏 小規模校も利点ある・椎葉氏

座談会に参加した(左から)椎葉壮市さん、豊重哲郎さん、坂本休さん、徳野貞雄さん=12日、大分県日田市中津江村
▼都市の人口過密
-熊本市から大分県日田市へ向かう車中、都市の人口過密と新型インフルエンザ流行の因果関係が話題に
徳野氏 九州でも新型インフルエンザの感染者が増えている。都市の人口過密と密接な関係があると指摘する研究者もいる。家畜の場合、狭い獣舎で鶏や豚を大量に飼育していると、ウイルスの突然変異が起こりやすいし、感染症は短時間に爆発的に広がる。
豊重氏 その話は経験的に納得できる。私は以前、ウナギの養殖をしていたが、養殖池である一定数以上のウナギを飼うと、必ずといっていいほど病気が広がる。
椎葉氏 だとすれば、椎葉のような過疎地のほうが安心ですな。空気はいいし、人は少ない。
▼合併後の現実は
-大分県日田市中津江村では、元村長の坂本休さん(78)と市町村合併などをテーマに意見交換
坂本氏 日田市と合併して四年目を迎えた。(旧中津江村は)自主財源が乏しく、合併の時機を逸し、後になって後悔してはいけないと考えたが、合併効果よりデメリットのほうが多いのは確かだ。
-合併後、中津江を離れ、日田市街に移り住んだ旧村職員も多いと聞く
坂本氏 役所に勤める者は、村の中で生活し、買い物をするのが、それも務めだと思っている。しかし、合併後、職員の3分の1しか地元に残らなかった。若い人が村に集まる機会が減った。住民の関係も疎遠になっていった。
徳野氏 村職員は旧村内に何人残っているのか?
坂本氏 日田市の中津江村振興局の職員など18人。もともと村役場には53人いた。勤務先が日田市役所になった職員はその近くに住み、親は中津江の家に残って農業をやったりしている。
椎葉氏 そんなに多いのか。
坂本氏 編入合併といえば聞こえはいいが、実質は吸収合併だ。悪く言えば、広い領地の殿様が狭い領地を滅ぼしたのと同じ。中津江村が更地にされてしまい、耕すところも、種をまくところもないでは、何の楽しみもない地域になってしまう。それではあまりにも寂しいと思い、地底博物館「鯛生金山」と「鯛生スポーツセンター」は何とか残してもらった。
▼小中学校も統合
坂本氏 旧上津江村も旧中津江村も小学校が4校ずつあったが、どちらも1校になった。両地域小中学校統合の話も出ている。子どもの教育を考え、保護者は学校の規模が大きくなることに比較的、前向きだ。しかし、年配の住民は、地元に学校がなくなると「地域がさびれる」「商店がさびれる」と心配する声も目立つ。
-宮崎県椎葉村も小規模校が多い
椎葉氏 椎葉中学校では、自宅からの通学が難しい生徒が多く、中学生の半数以上は学校の敷地内にある寮に入っている。早い時期から親離れをするので、いい面もある。村外の高校に進学しても、ホームシックにかかることはない。
●歴史考え過疎化対策・徳野氏 空き家整備し活用を・豊重氏
▼地域固有の問題
徳野氏 中津江の過疎化は、鯛生金山の閉山に伴う問題があり、普通の農山村とは違う。地域それぞれの歴史を踏まえた対応を考えないといけない。行政は一律でくくるが、椎葉と中津江、やねだんとは、歴史も産業構造も全然違う。
椎葉氏 椎葉村に椎葉ダムが完成したのが1955年。当時、村の人口は約1万人。ダム工事が終わると、工事に従事していた人たちが出て行った。現在は約3100人となっている。
徳野氏 中山間地の人口が減るのは仕方がない面もある。その中でどう生き延びていくか、地域を支えていくかを考えていかないと。役場の職員というのは、地域における核ともいえる存在だ。働き盛りで、その多くは妻、子ども、両親と暮らしている。地元で買い物もするし、学校にも通う。そういった家族が周囲の5―6戸くらいを支えることもできる。
▼若者集まる地に
豊重氏 こういうことができないだろうか。集落の空き家をきれいに整備し、夏休み、春休みに市外の子どもたちを寄宿させるとか。せっかく大分トリニータがあるから、サッカーの合宿をここでしてもらうとか。すごく人が集まりそうな気がする。
坂本氏 なるほど。うちでも鯛生スポーツセンターで子どもさんのスポーツ合宿などに取り組んではいる。空き家の活用は、家主の意向などもあって、いろいろ難しい面もあると聞く。
-よそから移り住んでくる人は?
坂本氏 私が住む集落は16世帯。うち2世帯は北九州市から移り住んだご夫妻だ。集落は不便な山の上にあるが、この人たちは「国道筋なら住まない。不便なところだから住んでいる。雪が降れば喜ぶし、大風が吹けば驚く。そんな風に楽しみながら生活している」と言っている。集落のお世話も一生懸命にやってくれる。元日の催しにもそろって来てくれて「こんな楽しく面白いことは味わえなかった」と喜んでくれた。
豊重氏 うちの集落では、空き家を住民総出で改修し、そこに芸術家を住ませている。
坂本氏 素晴らしい取り組みだ。うちの集落でも参考にしたい。若い世代が、とどまりたいと思うような地域に耕していきたい。
▼集落支える主婦
-大分県日田市伏木にある山本響子さんの実家では、近所の柳瀬隆喜さん(79)、長尾勝弘さん(78)も座談会に参加した
柳瀬氏 伏木では、実家から日田市の市街地に通勤している若い世代が多い。福岡市などに働きに出ている人も、平均して月1―2回は実家に帰っている。私は息子夫婦と同居しており、孫3人のうち2人が日田市で就職して、家から通っている。
長尾氏 息子は結婚して福岡で勤めている。忙しく休みが少ないので盆正月くらいしか帰って来られない。家には若い人がおらず、力仕事ができない。ただ、娘が近くに住んでおり、いろいろ世話をしてくれる。
徳野氏 農山村の人たちは、息子さんの話ばかりしがちだが、本当に力になっているのは近くにいる娘さん、というケースが多いはずだ。
豊重氏 やねだんでも主婦が集落のグループ活動を引っ張っている。地域再生には女性の力が必要だ。気掛かりなのは、年ごろの女性の結婚意識が希薄なことかな。
椎葉氏 息子の嫁は看護師をして家計を支えている。介護士や看護師などとして地域を支えている女性が多い。婦人会の活動が活発で、独りで暮らしているお年寄りの健康状態のチェックなどをしてくれている。
=2009/06/27付 西日本新聞朝刊=
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