東国原英夫知事は21日、初当選から1年を迎えた。メディア露出で宮崎のPRに奔走する一方、内政面ではマニフェスト実現が最大の課題だ。地方自治の在り方を宮崎から全国に問い掛けたこの1年。県政の課題や2年目への抱負などを東国原知事に聞いた。 (聞き手は宮崎総局・郷達也)

 ●さらに意識改革を

 -就任1年。感想は。
 「あっという間だったが、振り返ると長かった。見るもの、聞くもの、触れるものすべてが新しい世界だったので充実していた。新しいものをとりいれよう、なじもうと一生懸命だったので、一心不乱に過ごした1年だった」

 -就任以来「県民総力戦」と訴え、県民に意識改革を促し続けてきた。2年目の総力戦が目指す方向性とは。
 「(意識改革につながる)『気付きの輪』をもっと広げないといけない。まだ一部の人たちだけという印象。1つ1つの行動、言動を二乗、二乗で広げていきたい」

 -県議会の海外視察中止は、県民が声を上げた最たるものだったが。
 「県議会も変わってきた。海外視察中止や一問一答方式、政務調査費(全支出公開)など。今後、議員定数是正にも切り込んでいかれると思う。自民党県連も(国政選挙公認候補の)公募制などでがらっと変わってきた」

 ●記者クラブに疑問

 -4月の定例記者会見で「定例会見必要か」と発言があった。現時点での定例記者会見、記者クラブに対する認識は。
 「今も記者クラブに対する制度的な疑問は持っている。ただ、記者クラブと戦うのはものすごいエネルギーがいる。そのエネルギーは、県勢発展に向けた方がいいと思う。記者も理論武装してるから、こっちもその理論武装に対抗する理論武装をしないといけない。それが面倒くさいというか、そんな暇がない。むしろ県政を立て直すことにエネルギーを費やした方がいいかなと思って、(よそに)置いている」。

 -田中康夫前長野県知事は記者室を閉鎖し、誰でも利用できるプレスセンターにしたが。
 「そこまでは考えていない」

 -事務事業見直しに関し「記者クラブも聖域ではない」と当時、発言していたが。
 「もう1人僕がいれば(記者クラブと)戦ってもいい。自分1人では手が回らない。記者クラブが絶対悪とは思っていない。制度疲労している部分があるのではないかというぐらいなので、定例記者会見が絶対的に無駄ということではない。県民の皆さんにメディアを通じて地元の新聞テレビ雑誌を含めて、私の考え方が伝わっていくという点では、一定の評価はさせてもらっている。記者会見をどれだけの人が見るのか、というのはあるが、私が一時間我慢すればいいだけのこと」

 -月2回、毎回約一時間の頻度については。
 「毎日とか、週1回会見するのが好きだという知事や議員さんもいるみたいだ。何を考えているんだろう。個別の取材などで話して、また、定例会見で同じことを話さないといけない。そういったのが無駄という気がする。同じことを何回も何回も繰り返して言うのは、私は苦手だから」

 ●民間の立ち位置で

 -民間から鳴り物入りで県庁に入ってきたが、「知事像」については。
 「全国知事会は、中央省庁から降りてきた知事が多いので『役所然・公務員然』の人が多い。『完全民間』は恐らく私だけで、逆にその立ち位置を利用しようと思う。自分が役人を演じるのではなくて、自分はこんな人間で知事をやっている、自分が知事という職業を取り込んでいく。その作業が自然体でやりやすい。結果、名物知事・型破り知事と言われても、そういう知事が1人2人いてもいいかなと思う」

 -役所に染まった感触や、行政の現場で自身が葛(かっ)藤(とう)することはあるか。
 「ある。2、3割は、行政マンとしての色が付いた。でも、もう限界。これ以上は行政マンにはならない。ある程度、そういった面も含んでおかないと、柔軟な対応をしないといけないし、あやふやな玉虫色の答弁が必要なときもある」

 ●職員とは「柔軟」に

 -「県民が私のブレーン」と言っているが、県庁内ではどうか。
 「職員全員がそう(ブレーン)だと思っている。一人一人となかなかコミュニケーションがとれないが、私はトップダウンのピラミッド型ではなくて、ネットワーク型・ボトムアップ型が好きだし、自分に合っている。自分に柔軟性がないといけないし、特定の人たちだけの意見を聴いてもバランス感覚が乏しい。多角的にネットワークをつくり、円に近づけていく作業が僕のやり方」

 -1年間で円になりつつあったか。
 「まだなってない。聞き取り調査が足りない。赤江浜問題や高千穂鉄道関係の人たちなどいろんな人にも会いたい」

 -就任当時は「役所は紙の文化」と言っていた。役所体質にも切り込んだが、職員への評価は。
 「最大限評価している。優秀な人は、論をまたない。忍耐力もある」

 ●分権で中央と戦う

 -地方自治について就任前の考えと、現実のかじ取りでのギャップは。
 「自治の本旨は『全員住民参加』。全員が参加し、全員が関心を持つ。特に、大人だけでなく子どもまで自治に興味を持つ。自分たちの自治体を自分たちで守る、つくり上げていくという意識を芽生えさせないといけない。それは最大の教育だ。だから、メディアでも子どもたちが見る番組にも出た。結果、東国原知事を知らない子どもたちはいないというのが、僕の最大の成果。でも『全員参画しよう』と言い続けてきたが、浸透に時間がかかる。意識改革は時間がかかるというギャップは感じる。日本、県も含めて民主主義にどれだけ無関心だったか、と逆に気付かされた」

 -今後の地方分権、地方自治に最も求められるものは。
 「住民自治、全員参加の自治体をつくり上げるということだが、地方分権は中央との戦い。人、モノ、金、すべてが都市部に一極集中しているので分散しないと、この国の将来はありえない。少子高齢化の中でも経済成長をしないといけないが、それは分権しかない」

 ●一歩先行く宮崎に

 -一方で、メディアをうまく利用している面もあるが。
 「メディアなくしては政治は語れない。メディアを生かすも殺すも、政治を生かすも殺すもメディア次第、政治次第。ある程度の距離を置いて緊張感を保ちながら利用され利用する、という関係が今のところベストなのかなという感じはする」

 -県の将来像を。
 「県民が宮崎に生まれ育ってよかったと、宮崎に行ってみたいなと、多くの人が思うような元気のある自治体にしたい。存在感を示し、ちょっと風変わりでもいい。個性的な宮崎を目指している。すべてに対して後れをとらず、1歩先を進んでいる宮崎にしたい」


=2008/01/22付 西日本新聞朝刊=