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"卵子若返り"もっと安全に 振動針使い卵核を移植 外的刺激抑え染色体保護 北九州の医院 新技術

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 不妊の一因とされる老化した卵子の核を取り出し、若い女性の卵子の中に置き換える「卵子の若返り」を研究してきたセントマザー産婦人科医院(北九州市)が、針振動のみでより安全に行う技術を開発した。これまでは薬剤や電気刺激を使っていたため、染色体異常を発生させる危険性があった。既に院内の倫理委員会で承認を得ており、今後、臨床応用を目指す。

 卵子は加齢により細胞質が劣化する。そこで取り出した核を、若い女性の卵子から核を除去した細胞質に融合させ、卵子を再構築した上で受精させる研究が進められている=イラスト参照。同医院は日本産科婦人科学会の承認を得て、2006年から基礎研究に取り組んできた。

 従来の手法では、核と細胞質を融合させる際、薬剤に浸したり、電気刺激を与えたりしていた。ただ、熱など外的な刺激が加わることで染色体を傷つける恐れが大きかった。そこで同医院は、微細に振動する針のみを操りながら、より自然な形での融合に成功した。

 この技術を使って融合させた再構築卵子に顕微授精したところ、35個のうち27個が受精した。このうち23個が分裂を始め、9個が子宮に着床できる直前の段階まで成長したという。

 不妊治療には別の女性から卵子そのものを譲り受ける方法もあるが、それだと母親の遺伝子は受け継がれない。田中温(あつし)院長は「晩婚化が進む中、卵子の老化が妊娠と出産を困難にしている。自分の遺伝子を受け継いだ赤ちゃんを産んでもらうために、この技術を確立したい」と話している。

 ●遺伝上の親3人

 倫理面で課題も

 【解説】セントマザー産婦人科医院がより安全に卵子を再構築する新技術を開発したことは、17年前に米国で始まった「卵子若返り」の研究が臨床に向けて最終段階に入ったことを意味する。ただ、倫理面の課題も残っており、議論の積み重ねが求められる。

 再構築卵子には、父親と母親の遺伝子だけでなく、卵子を提供した別の女性の細胞質に含まれる遺伝子も受け継ぐことになる。細胞質の遺伝子は全体の2%にすぎないものの、遺伝的には3人の親を持つことになり、倫理的な問題を指摘する声もある。

 厚生労働省も2003年に「遺伝子の改変につながる可能性があるので当分の間、生殖補助医療に用いることは認めない」との見解を出した。一方で「科学的知見が集積された際には実施の是非を再検討する」と含みを持たせてきた。

 だからこそ同医院は、10年近い歳月をかけて慎重に試行錯誤してきたのだ。6組に1組とされる不妊に悩む夫婦にとっては朗報であり、倫理面をクリアするためには、臨床に向けた年齢制限や施設基準などルール整備が欠かせない。

 同時に、卵子の老化が進む前に出産を選択しやすい社会環境づくりや働き方の見直しが不可欠だ。少子化についての国民的議論につなげていかなければならない。=2014/01/12付 西日本新聞朝刊=

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