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てんかん 手術で根治も 国内初実施から30年

 定期的に薬を服用しても発作が抑えられない難治性のてんかん患者の脳に、外科手術を施すことで根治させる医療が進んでいる。日本てんかん協会などによると2005年以降、手術は全国で毎年400~600件実施。患者の2割が難治性とされるが、その4分の1は根治や症状の緩和が可能という。専門家は「てんかんは危険な病気という偏見が独り歩きしがちだ。薬剤治療を含め、治せるてんかんがあることを広く知ってほしい」と訴えている。

 てんかんは、脳の神経細胞が過剰に興奮するために起こる慢性の脳疾患で反復して起こる発作が特徴。協会によると、国内では毎年3万~5万人が新たに発症しており、患者数は約100万人。うち7~8割は薬で発作が抑えられる。外科手術は、薬が効かない難治性の患者が対象だ。

 手術では、どんな状況で発作が起きるのかを医師が詳しく聞いた上で、磁気共鳴画像装置(MRI)検査と脳波を調べ、発作の原因となる脳内の異常領域を特定して除去する。1983年ごろから国立静岡てんかん・神経医療センター(静岡県)を中心に始まり、検査機器の進歩とともに広がった。現在では全国の約20施設が年間10件以上の手術をそれぞれ行っている。

 昨年15件の手術をした産業医科大学病院(北九州市)では93年以降、計163人に実施。術後、75%の患者は発作がゼロになり、25%は発作が「ほとんどない状態」になった。検査段階を合わせても治療期間は3カ月~半年で、術後に重い後遺症が現れたケースはないという。

 協会によると、国内のてんかん専門医は約400人で、患者2500人に1人の割合。産業医科大の赤松直樹准教授は「手術で治る患者が見過ごされていたり、間違った薬を投与されたりしている可能性もある。専門医に相談してほしい」と話している。

 ●克服されつつある病気

 市民への周知

 課題

 偏見恐れる元患者や家族

 難治性てんかんの一部を外科手術で根治させる現在の治療が国内で始まって30年になるが、医療関係者を含め、市民にはほとんど知られていない。背景には、手術で治ったのに社会の根強い「偏見」を恐れて、元患者がその経験を明かせなかった現実がある。

 産業医科大病院で手術を受けた北九州市内の30代の主婦は術後、発作が完全に止まった。出産も経験した。主婦の母親は「将来のことを考え、周りに知られないように心配した」と語る。てんかん患者の中には、職場などに知られないように、こっそり薬を飲んでいる人が少なくない。

 2011年に栃木県鹿沼市で、てんかんの発作で意識を失った男性のクレーン車が小学生の列に突っ込み、6人が死亡した事故を受け、症状の危険性が強調された。福岡市西区でてんかん患者の通所作業所を営む岡本朗さん(55)によると、事故後、職場で配置転換を余儀なくされたり、退職を迫られたりした患者が相次いだという。年内施行の改正道交法では、てんかん患者は運転免許の取得・更新時に症状を正しく申告しないと罰せられるようになる。岡本さんは「てんかんは『危ない病気』という偏見が独り歩きし、差別が強まるのが怖い」と指摘する。

 てんかん患者の70~80%は薬で発作が止まり、5%は手術で根治や緩和が可能。医学の進歩により克服されつつある病気なのだ。北九州市の主婦は「患者はあきらめずに、適切な治療を受ければ治ることを知ってほしい」と呼び掛ける。=2014/01/15付 西日本新聞朝刊=

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