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スマホで遠隔診療 福岡市で実証実験 患者も医師も負担軽減へ 安易な受診助長の懸念も

内田直樹院長は診察室にいながら、パソコンのテレビ電話機能を使って診察する
内田直樹院長は診察室にいながら、パソコンのテレビ電話機能を使って診察する
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カメラで皮膚症状を撮影して診てもらう
カメラで皮膚症状を撮影して診てもらう
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患者の長女(左)はスマホに映る内田直樹院長の話に耳を傾ける
患者の長女(左)はスマホに映る内田直樹院長の話に耳を傾ける
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 医師が情報通信技術(ICT)を活用して離れた場所にいる患者を診る「遠隔診療」を政府が推進し、今後は離島やへき地以外の患者にとっても身近になりそうだ。福岡市では8月から、市や市医師会などによる実証実験も始まっている。

 「寝たままでいいですよ。食べられていますか」。8月22日夕、福岡市東区名島の在宅療養支援診療所「たろうクリニック」の内田直樹院長(39)がテレビ電話を使って、区内の自宅で療養する悪性腫瘍の男性患者(86)と、介護する長女(55)や妻(86)に話し掛けた。

 「ヨーグルトを少しだけ」。長女が、言葉が出ない男性の顔をスマートフォンのカメラで撮影しながら答え、赤くなった左脇周辺の皮膚も映す。内田院長が排せつや服薬の状況を聞くなど、テレビ電話による診察は約30分続いた。

 内田院長は、福岡市と市医師会、医療法人社団鉄祐会(東京)が来年3月まで取り組む「ICTを活用した『かかりつけ医』機能強化事業」の実証実験に参加。オンライン問診なども含む実験には、市内の21医療機関が加わっている。

 この男性患者の場合、内田院長が診察室でパソコンに、患者が自宅でスマホにそれぞれ向かう遠隔診療を月2回、試みた。本来なら毎週必要な往診が2週間に1回で済み、急変した場合もテレビ電話で様子を診ることで往診が必要かどうかの判断がしやすいという。

   ◇   ◇

 男性患者は長崎県に住んでいた2年前の夏、悪性腫瘍と診断された。2人暮らしだった妻も認知症の症状が出てきたため、昨年4月に福岡市の長女宅に転居。長女が車に両親を乗せて通院してきたが、男性の症状悪化もあって遠隔診療を試すことにした。

 2回目のこの日、通話が途切れたり、横たわる様子をうまく撮影できなかったりと、スマホの操作に戸惑う場面もあった。長女は「撮影しながら話して、先生が話す内容を記録するのは大変。もっと操作しやすくなれば」と話した。

 男性は1週間後、自宅で息を引き取った。亡くなる前日もテレビ電話による診察があり、みとった長女は「主治医といつでもオンラインでつながれる安心感があった。通院の負担も減り、母の診察にも使いたい」。内田院長は「状態が安定している患者だけでなく、末期でも対面診療を補完して患者をより密にサポートできると分かった」と話す。

   ◇   ◇

 遠隔診療については、対面診療が困難な離島やへき地の患者、病状が安定している慢性疾患の患者など、限定的に行われてきた。

 今年6月、閣議決定された成長戦略に「ITを使った遠隔診療と対面診療との組み合わせの効果について、診療報酬改定で評価を行う」と盛り込まれた。来年度の診療報酬改定で報酬が手厚くなり、普及する可能性が大きい。

 診療報酬改定を議論する中央医療審議会では2月、議題に上がった。「遠隔診療を拡大していくことで、医療費も適正化が図れるし、患者や医師の負担も軽減されるのではないか」との賛成意見がある一方、「外出するのが面倒くさいという安易な気持ちでも遠隔診療を認めるのか」「かかりつけ医が体調、顔色、息遣い、表情などを見ることも含めて医療。スマホで状態だけ確認するというのは医療の原則に反する」などの反対意見も根強い。


=2017/09/04付 西日本新聞朝刊=

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