看護師が補助 遠隔死亡診断 データ送信、確認書類を代筆 在宅や施設でのみとり スムーズに

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看護師たちを前に、遠隔死亡診断について解説する大沢資樹教授=3日、福岡市早良区
看護師たちを前に、遠隔死亡診断について解説する大沢資樹教授=3日、福岡市早良区
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長崎県の離島にある特別養護老人ホームでは、年間数人のみとりでトラブルが起こることもあるという
長崎県の離島にある特別養護老人ホームでは、年間数人のみとりでトラブルが起こることもあるという
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 情報通信技術(ICT)を使った死亡診断に関する国のガイドラインがまとまり、本年度中に運用が始まる。医師がすぐに駆け付けられない離島や介護施設を念頭に、看護師が心電図や写真のデータを取って医師に送信し、死亡診断書を代筆する仕組みだ。超高齢社会に伴う「多死社会」を前に、在宅でのみとりをスムーズにする狙いがある。

 遺体の埋葬や火葬に必要となる死亡診断書は原則、死亡を直接確認した医師が交付する。このため、離島などでは医師による死後診察が困難な場合、死亡診断書が出るまで埋葬できずに遺体を長時間保存したり、長距離を搬送したりするケースが生じている。死期が近づくと入院させたり、救急搬送したりする例も多いという。

 昨年6月、こうした状況を改善するため、看護師の補助による遠隔死亡診断を可能にする規制緩和が閣議決定された。厚生労働省研究班(代表=大沢資樹・東海大教授)が6月、「ICTを利用した死亡診断等ガイドライン」を策定。年内には看護師の研修を行い、鹿児島県などの離島、医師が常駐していない介護施設などで運用が始まる見通しだ。

 人口動態統計によると、2016年の死亡数は約130万8千人だが、ピークとなる40年は約167万人と3割増で、在宅でのみとりも増加が見込まれる。医師が全てに対応するのは都市部でも困難となることが予想される。

 ガイドラインによると、悪性腫瘍や肝硬変などの疾患で、14日以内に対面診察した主治医が死亡が近いと予測しており、延命治療をしないことや遠隔死亡診断について本人と家族が同意している場合に認められる。(1)12時間以内に医師が直接診断できない(2)看護師が脈拍や呼吸の停止の確認を含め、医師の判断に必要な情報を速やかに報告(3)医師がICTを活用した通信手段で「異状死」でないと判断できる-ことも条件としている。

 9月上旬、福岡市であった日本フォレンジック看護学会で講演した大沢教授(法医学)は「多死社会には必要だが、通信のセキュリティー確保やプライバシー保護、犯罪の温床としないシステムが万全でなければならない」と強調。研究班メンバーで日本赤十字九州国際看護大の柳井圭子教授(看護倫理)は「看護師が虐待などの異常を見抜く目を養い、疑問があるときは警察以外にも相談できる機関が必要」と話した。

 ●看護師確保に不安 長崎・離島の特養関係者 施設みとりで混乱も

 「選択肢が増えるのはいいことだが、本当に必要なのか…」。離島の長崎県新上五島町で特別養護老人ホーム「つばきの里」(定員30人)を運営する神之浦剛史施設長(42)は、遠隔での死亡診断に首をかしげる。

 つばきの里では、本人や家族が施設でのみとりを希望している入所者を中心に、年に数人をみとっている。近くに24時間対応の診療所はないが、車で約5分の場所にある公立の上五島病院(186床)と契約し、訪問診療を頼んでいる。

 ただ、夜間のみとりは必ずと言っていいほどトラブルになるという。数年前、深夜の見回りで入所者が心肺停止状態になっているのを職員が見つけ、病院に電話して往診を頼んだが「当直なので対応できない」。119番すると、消防署が警察に通報。警察官が「異状死」と判断して事件性がないか遺体を検視し、職員のアリバイを調べた。そんなことが5回あった。

 在宅介護で長く頑張ってきた家族が、訪問看護師や医師と連絡が付かずに焦って119番。異状死と警察に疑われ、「在宅介護なんてしなければよかった」と後悔したという話も聞く。

 遠隔での死亡診断には、24時間対応可能な訪問看護ステーションの存在が欠かせない。現状でも不足しているのに可能なのか。専門知識を持つ看護師の養成も必要だが、「医師不足をカバーしていて忙しい離島の看護師が、研修を受けに行く時間があるだろうか」と神之浦さんは心配する。

 穏やかなみとりを実現するため、遠隔死亡診断より先にできることがあるのではないか。「死亡診断は、医師が全くいない離島を除いて、医師が直接目で見るのが望ましい。大切なことまで看護師に押しつけるようなことがあってはならない」


=2017/09/18付 西日本新聞朝刊=

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