薬の飲み過ぎご用心 ふらつき、転倒…副作用相次ぐ 病院ごとに重複処方も 薬剤師ら警鐘「お薬手帳は1冊に」

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 持病が増えるにつれて薬の量も増えていく高齢者。複数の睡眠薬を飲んでいた人が転倒して骨折するなど、薬の飲み過ぎによる副作用とみられる症例が相次いでいる。病気との飲み合わせが悪い薬が処方されたり、年齢とともに代謝が悪くなり規定量でも効き過ぎたりすることも。今後、投薬治療が中心の在宅患者が増えると予想され、薬剤師を中心に多剤併用を防ぐ取り組みが始まっている。

 福岡市の総合病院に、深夜に自宅で転倒して大腿(だいたい)骨を折った80代女性が搬送されてきた。持参した薬を調べると、市内の内科医院と整形外科医院から睡眠薬が重複して処方されていたことが判明。「薬が効き過ぎて、トイレに起きた際にふらついたのではないか。入院で足腰が弱くなったり、認知症を患ったりしなければいいが」と病院の薬剤師は案じた。

 多剤併用による副作用は、ふらつきや転倒、物忘れ、意識障害、食欲低下、便秘、排尿障害などがある。医師は患者の薬の全体量を把握せず、担当する疾患だけを見て治療薬を決めがちなため、内科や整形外科、歯科…と複数の医療機関や診療科にかかると多剤併用が起こりやすい。特定の病気の人は飲んではいけない「禁忌薬」が処方されることもある。

 「特に睡眠薬、痛み止め、胃薬など『ついでにもらう薬』が要注意です」と話すのは福岡市薬剤師会の田中泰三会長。持病で定期的に通院している医療機関で、「眠れない」「胃が痛い」などと訴えると漫然と長期処方されることが多い。患者側の「薬をたくさんもらうと安心」という過度の依存心も背景にある。

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 東京大病院が高齢の入院患者を対象にした調査で、6種類以上服用すると副作用が生じる確率が10%を超えることが判明=グラフ(1)。厚生労働省の調べでは、75歳以上の4分の1が調剤薬局1カ所当たり7種類以上を処方されていた=グラフ(2)。

 多剤併用を防ぐ取り組みは各地で始まっている。北九州市では八幡地区の薬剤師や医師が4月、「北九州高齢者薬物療法研究会」を立ち上げ、減薬方法を探っている。代表世話人の末松文博さんが薬剤部長を務めるJCHO九州病院(同市八幡西区)では既に実践。転倒して大腿骨骨折で入院してきた80代男性について、重複処方されていた痛み止めやコレステロール低下薬を減らし、睡眠薬をふらつきが少ないタイプに変更して、17種類を10種類に減らした。

 協会けんぽ福岡支部も、診療データの分析で多剤処方や禁忌薬処方、副作用の実態をつかみ、対象者に改善通知をする調査事業を本年度から2年間、実施。「健康を守るだけでなく、不必要な薬が減れば医療費も減らせる」と強調する。

 重複処方や禁忌薬処方は、薬剤師が患者に「他に飲んでいる薬は?」と尋ねたり、「お薬手帳」の確認をしたりすれば防げる。ただ、本人が薬を覚えておらず、手帳の管理も不十分だと薬剤師が気付くのは難しい。

 福岡大薬学部の神村英利教授は「お薬手帳は必ず1冊にまとめることが重要。がん患者など多剤併用が必要な人もおり、量の多さは必ずしも問題ではないが、飲み忘れや副作用が起こりやすい。気になる人は自己判断で中断せず、薬剤師や主治医に相談して」と呼び掛けている。

=2017/09/25付 西日本新聞朝刊=

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