病気と付き合い銀輪の夢を追う 別府翔青高3年 1型糖尿病患者の田仲駿太さん

「勇気を与えられたら」と同じ病気の患者やその家族に自身の体験談を話す田仲さん
「勇気を与えられたら」と同じ病気の患者やその家族に自身の体験談を話す田仲さん
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 ●「先輩たち」の言葉が支え 愛媛国体(少年男子ケイリン)で見事V

 病は闘うだけのものではないと、教えてくれる若者がいる。大分県別府市の別府翔青高自転車競技部の田仲駿太さん(18)。1型糖尿病を患いながら、10月の国民体育大会(愛媛国体)自転車少年男子ケイリンで優勝した。「病気を言い訳にしたくない。うまく付き合えばできないことなんてない」。銀輪で駆け抜け続けるという夢は始まったばかりだ。

 田仲さんが体の異変を感じたのは8歳の春。喉が渇き、トイレの回数が増え、授業に集中できない日が続いた。食べる量は変わらないのに、見た目で分かるほど痩せた。かかりつけ医の診断は「風邪」。薬を飲み続けたが、症状は治まらなかった。両親が自宅にあった小児医療の本で調べたところ、症状が1型糖尿病に似ていると気付く。病院で検査を受けると、危惧が当たっていた。

 「なんで自分が」。頭が真っ白になり、現実を受け入れられない。それでも時間は待ってくれなかった。インスリンが十分につくられないまま、長い月日を過ごしたことで高血糖状態に陥っていた。高血糖を放置すると体中の毛細血管が破壊され、末梢(まっしょう)神経にも悪影響が及び、さまざまな合併症を引き起こす。「このままでは危険」。すぐ治療を始めるように言われ、その日のうちに医療設備が充実した病院に入院した。

 「もう普通の生活はできないのかな」。不安にさいなまれたが、担当医に励まされた。「インスリン注射で血糖値を調整すれば今まで通りの生活でいい。スポーツもできる」。1カ月の入院で治療を受け、注射など家庭での血糖管理法も学び、少しずつ落ち着いた。

 おかげで退院後も、幼稚園の頃に始めたサッカーを続けられた。中3の時、別府翔青高自転車競技部に兄がいる同級生から「一緒に自転車をやらないか」と誘われた。元々自転車に興味があり、すぐに見学へ。指導陣から「センスがあるね」と褒められ、進学先を同高に決めた。

 入部後はインスリン投与量の調整に苦労した。自転車競技が体にどのくらい負担をかけるのかが分からない上、成長期に入って血糖値を上げる作用がある成長ホルモンの分泌が増えていた。投与量が多いと低血糖状態になって手足の震えや倦怠感(けんたいかん)に襲われることもあった。日々の微調整を繰り返すうちに加減を体得した。

 病気を理由に、練習で妥協はしなかった。他の部員と同じように、休日は朝から夕方まで8時間みっちり鍛錬を積んだ。そして、高校生活の集大成だった10月の愛媛国体で栄冠をつかんだ。

 「苦しい。やめたい」と思った時期もあった。支えとなったのが、同じ病気の仲間たちだった。発症した年の夏から、高校生以下の患者を対象としたキャンプに毎年参加。当事者にしか分からない悩みを打ち明け合った。それぞれの夢を追う「先輩患者」の姿や言葉は勇気を与えてくれた。「一番分かり合える仲間だから、心にぐっと来ます」

 高3の今は「後輩」ばかりとなった参加者たちを自分が支える番だ。10月、大分市で開かれた1型糖尿病に関する講演会(ノボ・ノルディスクファーマ社主催)に登壇。患者やその家族の前で体験や国体での実績を語った。

 選手全員が1型糖尿病を患うプロサイクリングチーム「チームノボノルディスク」で活躍したジャスティン・モリス選手(31)=オーストラリア=も同じ場所で講演した。「自分で病気を管理すれば、夢は追い続けられる。人生を病気の不安に支配されるべきではない」

 モリス選手と一緒に走る機会を得た田仲さんは思いを分かち合った。「今の医療では治せない以上、悩んでも仕方ない。うまく付き合っていけば病気を理由に何かを諦める必要はない」

 来春、体育大に進学する。「将来はプロになるか、指導者になるか。大学でも自転車と向き合い続けたい」

 ▼1型糖尿病 膵臓(すいぞう)の組織「ランゲルハンス島」のβ細胞が破壊され、血液中の糖分をコントロールするインスリンが分泌されなくなる疾患。現時点では完治のための治療法はなく、患者は毎日注射などでインスリンを摂取して血糖値を管理する。主に免疫反応が正しく働かないことが原因とされ、生活習慣病とされる2型糖尿病とは全く異なる。若年期に発症する患者が多い。日本での発症率は10万人に1・5人とされる。

 ▼1型糖尿病のプロ選手 チームノボノルディスクは、全員が1型糖尿病患者という世界初のプロサイクリングチーム。2006年に米国でアマチュアチームとして設立後、08年にプロに昇格。現在100人以上が在籍、日本人はいない。日本でも、プロ野球・阪神の岩田稔投手やサッカーの元Jリーガー杉山新さん、エアロビック競技の元日本チャンピオン大村詠一さんら、プロの世界で活躍する選手がいる。


=2017/12/18付 西日本新聞朝刊=

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