変わる透析の光景 運動しながら… 自宅で簡単に…

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金井英俊副院長
金井英俊副院長
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 腎不全で人工透析を受けている人は全国で約33万人に上る。年に約5000人ずつ増え、患者の高齢化も進んでいる。透析が必要になっても少しでも長く自宅での生活を続けてもらうため、「安静第一」とされた透析中に運動を取り入れたり、自宅でできる腹膜透析が見直されたりと、人工透析の光景が変わってきている。

 ●ペダルこぎチューブで負荷 福岡・糸島のクリニック

 週3回の人工透析(血液透析)の日が、運動の日でもある。福岡県糸島市の男性(72)は9年前から、1回5時間かかる透析の最初の1時間、チューブで負荷をかけた脚を動かしたり、ペダルをこいだりと、下半身の運動に励む。「1人暮らしだから、じっとしていると弱ってしまう。自分のことは自分でできるよう、できる限り続けたい」。透析がない日も散歩するよう心掛けている。

 通っている市内の伊都クリニックは2008年5月から、透析患者の運動療法を始めた。患者は安静にしている時間が長いため、筋力の衰えが早く、要介護状態となるリスクが高い傾向にある。運動で筋力をつけ、入院や介護施設入所を防ぐのが狙いだ。

 心臓などの機能が低下している患者もいるため、事前のメディカルチェックを入念に行い、運動に耐えられる人に限る。強度や内容は健康運動指導士が個別に立案し、運動中はスタッフが常に体調を管理する。

 松嶋肖子副院長によると、半年以上続けた患者は、持久力や筋力、筋量が増えたか、維持できている。患者からは「歩くのが速くなった」「坂道や階段を上るのが楽になった」「膝の痛みがなくなった」などの声が聞かれるという。

 課題もある。当初は109人(平均64歳)が参加したが、現在は35人に減るなど継続が難しい。「安静第一」の生活を送ってきた患者には運動を嫌がる人も多く、参加率が低い。透析中の運動だけでは効果が上がりにくいため、自宅での運動を勧めてもなかなか浸透しない。また、透析中の運動療法は診療報酬が認められておらず、サービスとして実施しており、スタッフの確保に限界がある。

 松嶋副院長は「透析中の運動をきっかけに、なるべく体を動かす意識や習慣をつけてもらい、体力増進と在宅生活の質向上につなげたい」と普及を目指している。

 ●腹膜透析、生活の自由度高く 小倉記念病院

 在宅で簡単にできて、食事制限などの負担も少ない-。週3回の通院が必要な血液透析に比べ、生活の自由度が高い腹膜透析(PD)が見直されている。

 PDは、腹部に埋め込んだ細い管から透析液を腹腔(ふくくう)内に注入。血液中の余分な水分や老廃物が、ろ過機能のある腹膜を介して透析液に移動し、液と一緒に体外へ排出される。液の交換は毎日3~4回、1回30~50分。交換は腹部の管をつなぐだけだ。

 PD歴7年の男性(44)は朝、昼、夕、夜の1日4回、自宅で透析する。1日3回だった昨年までは旅行にもよく出掛けた。列車内や空港でも透析ができて、通院は月1回だけ。普段は仕事もしており「自分で管理できて自由な時間が持てるので、腹膜透析にして良かった」と話す。

 同市小倉北区の小倉記念病院は2008年、人工透析が必要になった腎不全患者に対し、最初にPDを提案する方針を掲げた。これまでは長時間じっとできない子どもなどを対象としてきたが、働き盛りの世代、通院が困難な高齢者にも勧めるようになったという。

 ただ、PDは腹膜が硬化してしまうため、長くて8年程度しか続けられない。全国的にも普及は進んでおらず、日本透析医学会によると、16年末現在で32万9609人いる人工透析患者のうち、PD患者は9021人でわずか2・7%にとどまっている。

 九州は福岡県(4・8%)などで増加傾向にあり、3・3%と全国平均を上回る。小倉記念病院の金井英俊副院長(腎臓内科)は「血圧など体調変動も緩やかで、食事は塩分制限のみ。血液透析に比べて医療費も抑えられるなど、メリットは大きい」と強調。最近では腎不全患者の在宅でのみとりにも活用されており「在宅医療の需要が高まる中、PDのメリットはもっと知られていい」と話している。

 ●慢性腎臓病を知ろう! 1月20日に公開講座 福岡市・天神

 最新の医療情報に触れることで病気の予防や治療に生かしてもらおうと、福岡県医師会と西日本新聞社は来年1月20日午後1時から、福岡市・天神のイムズ9階イムズホールで公開講座を開く。毎年恒例の企画で、今年のテーマは「新たな国民病 慢性腎臓病(CKD)を知ろう」。

 小倉記念病院(北九州市)の金井英俊副院長が「守ろう腎臓! CKDって何?」と題し、腎臓の働きや疾患のリスク、治療法について語る。続いてシンポジウムがあり、金井副院長のほか、県医師会理事で小倉第一病院(北九州市)の中村秀敏院長、本年度の県医師会医療モニター2人が参加。西日本新聞の宮崎昌治社会部長がコーディネーターを務める。

 参加無料。定員415人。先着順。締め切りは1月12日。(1)氏名(2)郵便番号(3)住所(4)電話番号(5)講師への質問-を書いて、福岡県医師会にファクス=092(411)6858=で申し込む。問い合わせは県医師会総務課=092(431)4564。


=2017/12/25付 西日本新聞朝刊=

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