MICE、県庁跡地どっちが先 長崎市と県2大事業思惑交錯 [長崎県]

新たな県庁、県警の建設が進む長崎市(パノラマ合成)
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長崎市がJR長崎駅西側に建設を計画するMICE複合型施設のイメージ図
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 長崎市内で進む二つの大型事業を巡り、県と長崎市の意見が対立している。県が2017年度に予定する県庁移転後の跡地(長崎市江戸町)に文化芸術ホールなどの整備を検討する一方、長崎市はJR長崎駅西側に大型コンベンション(MICE=マイス)複合型施設の建設を計画する。ほぼ同時進行ながら、ともに具体案が示されない状況に、両者の思惑が交錯。「MICE計画が具体化しなければ、ホールの青写真も描けない」と主張する県に対し、市は「年度内に県の整備計画が固まらないなら、独自にホール建設を検討する」と反発する。対立の経緯を追った。

 出島を望む現在の県庁は、長崎奉行所や海軍伝習所が置かれた古くからの一等地にある。一般市民らが委員となった県庁舎跡地活用検討懇話会が、交流や情報の拠点整備を提言したことから、県は移転後の跡地に、音響の優れたホールや屋根付きスペースのある広場、展望施設などの整備を念頭に置く。

 本年度中に整備方針を固める意向だが、見通しは立っていない。理由として「長崎駅周辺のイメージが固まらなければ、こっちも進められない」(県まちづくり推進室)と説明する。

 MICE予定地と県庁跡地の距離はわずかに約1キロ。機能が重複すれば、県民から思わぬ批判を招きかねない。県は、MICE計画の具体化こそが、県庁跡地の活用法を具体化する第一歩と位置付ける。

 □3000人規模を誘致

 22年の九州新幹線西九州(長崎)ルート開通に向け、開発が進む駅周辺。中でもMICE建設は目玉事業だ。長崎市は具体的な整備計画を示していないものの「機能が重複しないことは、県に伝え続けている」(市交流拡大推進室)と県の言い分に不信を募らせる。

 市の計画によると、学会や展示会を開催できる3千平方メートル規模の平土間のホールに加え、民間のホテルや飲食店などが入居する複合施設を想定。約20の会議室を設けるなど、1カ所で3千人規模の会合を誘致できるとしている。

 □共同開発の案も

 一見すると両者の主張は対立しているが、市は、県庁跡地へのホール整備を歓迎する立場でもある。約1800人収容の市公会堂(同市魚の町)を昨春閉館。市には当初、市役所(同市桜町)を公会堂跡地へ移転後、市役所跡地にホールを建設する構想があった。そこに県のホール整備案が浮上。仮に県と共同で県庁跡地にホールを建設すれば、早く完成し、コスト面でも優位性が高いとみる。

 一方で県は、2001年に佐世保市にアルカスSASEBOを建設した後、新たな文化施設整備に充てる基金を03年に廃止した。事実上、県主導の文化ホール建設を“終結”した経緯があり、市と共同で建設できるとすれば、県にとっては「渡りに船」の案でもある。

 □意地の張り合い

 思惑は一致しているはずなのに、かみ合わない両者。中村法道知事は、独自のホール建設に含みを持たせた市側の発言を聞き及び「理解に苦しむ」と苦言を呈した。

 なぜ、ここまでこじれるのか。長崎市選出のある県議は「結局、意地の張り合いに見える。県がやろうと、市がやろうと、住民にとっては同じ行政なのに」とため息を漏らす。県民や市民を置き去りにした対立が続く限り、6年後の新幹線開通に、長崎の新たな街づくりは間に合わないかもしれない。

 【ワードBOX】MICE複合型施設

 MICEは会議・研修、招待旅行、国際・学術会議、展示会の総称。長崎市はJR長崎駅西側に取得した約2万4000平方メートルの用地に、2021年11月の完成を目指す。年間利用見込みは約59万人、経済波及効果は123億円と試算している。長崎市議会が14年10月、MICE施設建設を目的とした予算案を否決したが、同12月にMICE施設の建設を前提にしないことなどを理由に可決した。長崎市は16年2月、あらためてMICE複合型施設の整備案を採用した。計画では、静岡県沼津市の施設「プラザヴェルデ」と同規模になる見込み。

 【ワードBOX】県庁跡地活用

 長崎市江戸町の県庁舎は1953年完成。2017年度中に同市尾上町の長崎魚市跡に移転する。県が現県庁跡地に建設を検討する文化芸術ホールは、長崎市が要望する1000~1200席規模を軸に検討中。「交流・おもてなし空間」の整備案もあり、埼玉県春日部市の「ふれあいキューブ」や新潟県長岡市の「アオーレ長岡」の構造を参考にしている。ともに開閉式の扉を設け、屋内外を一体的に利活用できるのが特徴。同市万才町の県警本部跡地(約2000平方メートル)には、民間資本を活用しホテルかオフィスビルを建設する方向で調整中。

=2016/12/01付 西日本新聞朝刊=

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