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薬物事件の医師を再雇用 子ども精神医不足深刻 北九州市立療育センター

書類送検された精神科医師が診察を続ける北九州市立総合療育センター
書類送検された精神科医師が診察を続ける北九州市立総合療育センター
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 危険ドラッグ所持の疑いで書類送検され、北九州市立総合療育センター(同市小倉南区)を1月に依願退職した30代の男性精神科医について、センター側は翌日に再雇用する異例の対応に踏み切った。「代わりの医師がいない」ことを理由に苦渋の選択を迫られたという。専門医不足や患者との結びつきの強さなど、子どもの精神科医療を巡る厳しく特殊な現状が、事件を契機に浮かび上がった。

 男性医師は昨年12月に東京都内で危険ドラッグを所持したとして、1月18日に医薬品医療機器法違反容疑で書類送検された。「医師は神様のような存在。事件を知り、患者の親には激震が走った」。広汎性発達障害がある子どもが男性医師の診察を受けているという母親は、今も驚きを隠せない。

 同センターは障害児・者の医療などを担う機関。運営する同市福祉事業団によると、センター常勤の精神科医はこの医師だけで、発達障害やうつ病の中高生を中心に約450人を担当。「音楽療法を取り入れるなど名医として信頼が厚かった」(患者の母親)といい、初診は3~4カ月待ちだったという。

 医師は1月30日に依願退職したが、センターは「専門医が少なく、後任をすぐに見つけるのも困難」として翌日に臨時職員として再雇用。3月末まで勤務させることにした。今回の判断には「公的機関が法を犯した医師を雇うのか」と批判もあるが、患者や家族からは「診察を続けてほしい」との要望が大半という。

 松尾圭介所長は「精神科は担当医師と患者の関係性が強い」と説明。福岡県の開業医は「発達障害の患者は特に変化を嫌う。自傷行為の恐れもあり引き継ぎに時間はかかる」と理解を示す。

 精神科医療を必要とする子どもの数も増加傾向にある。厚生労働省の推計ではうつ病や統合失調症、広汎性発達障害などがある0~14歳の1日の外来患者数は、1999年の3800人から2014年は3倍超の1万2900人に増えている。

 松尾所長は、男性医師の患者の症状や治療歴を3月末までに文書化し、後任医師や他の医療機関に引き継ぐ考えだが「後任が確保できるか分からない。医師会や大学病院に呼び掛けるしかない」と話している。

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 患者増加、初診10ヵ月待ちも

 子どもの精神科の医療現場では、専門医不足が深刻な問題となっている。

 総務省が1月に発表した「発達障害者支援に関する行政評価・監視」勧告によると、全国27の専門医療機関のうち、約半数で初診まで3カ月かかり、中には10カ月待つケースもあった。患者の殺到などを懸念し、専門治療ができることを未公表にしている医療機関も2割ほどあったという。

 九州北部の40代医師は、専門医が少ない背景について「児童精神科を学べる大学病院が少なく、治療マニュアルも確立されていないため、敬遠する医師が多い」と話す。「特に中高生は思春期特有の心の変化があり、障害かどうかの見極めも難しい。高い専門性が求められる」

 「児童・思春期精神科」を備える東京都立小児総合医療センターでは、常勤医師12人が1日約130人を診察するが、年間千人程度が新たな患者として来院するという。田中哲副院長は「病院間、地域間で医師のネットワークを構築し、急な欠員に対応できる態勢づくりが必要だ」と訴えた。

=2017/02/16付 西日本新聞朝刊=

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