熊本地震、犠牲の姉に「卒業証書」 特別学位記、妹が受け取る 東海大農学部

熊本地震で犠牲になった脇志朋弥さんの特別学位記を受け取った妹の麻奈好さん(右)、遺影を抱く母千鶴子さん(中央)、父忠行さん=19日午後1時22分、熊本市東区
熊本地震で犠牲になった脇志朋弥さんの特別学位記を受け取った妹の麻奈好さん(右)、遺影を抱く母千鶴子さん(中央)、父忠行さん=19日午後1時22分、熊本市東区
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 熊本地震で大きな被害を受け、3人が犠牲になった東海大農学部(熊本県南阿蘇村)の学生たちが19日、卒業式を迎えた。移転先の熊本キャンパス(熊本市東区)であった式には、亡くなった4年脇志朋弥(しほみ)さん=当時(21)=の遺族も出席し、特別学位記を受け取った。学び、親しんだ阿蘇の地で学生生活最後の1年を過ごせなかった234人。「いつか戻る場所ができるはず」と第二の故郷の復興を願い巣立った。

 化学の教員を目指していた脇さんは教育実習を目前にして、倒壊した「学生村」のアパートの下敷きになった。鹿児島県から訪れた遺族は最前列で式に臨んだ。志朋弥さんに代わり、妹の高校1年麻奈好(まなみ)さん(16)が山田清志学長から特別学位記を受け取ると、遺影を抱えた母千鶴子さん(54)と父忠行さん(59)はハンカチで涙を拭った。

 両親は大学を通じ「まだ写真を見たり、テレビで地震のニュースを見ると娘のことを思い出す。(特別学位を授与されて)本当にありがたい。帰ったら、真っ先に娘の墓前に報告します」とコメントを出した。

 卒業生を代表し、農学部の学生会長を務めた成木翔太さん(22)は答辞で震災後の歩みをたどった。「何にも代え難い仲間を失い、計り知れない恐怖と悲しみを経験した。それらを一身に背負って乗り越え、日々を過ごしてきた」

 友人、下宿先、ありふれた日常…。地震が奪ったものは数え切れない。思い出の詰まった阿蘇の地もその一つ。大学は農学部のあった阿蘇キャンパスの農場などは存続させるが、校舎の再建は困難な見通し。約800人が下宿した周辺の「学生村」も更地が目立つ。

 卒業生の山森佑亮さん(22)は「学生も教員も地域の人も、一つの家族みたいだった」と振り返る。阿蘇を離れても地域住民との交流を続けてきた原田健汰さん(23)は「牧場も農場も近い阿蘇でしか体験できない学生生活があった。いつか大学が戻るよう後輩に思いを引き継いでほしい」。

 会場の外では、大家たちも学生たちの晴れ姿を見守った。経営するアパートを失った男性(54)は「いつもなら退室後に見送るだけだけど、今年が最後だから」と涙を浮かべた。

 卒業後は多くの学生が熊本を離れる。故郷の仙台市で就職する熊谷麻里さん(24)はこう話した。「大変な目に遭っただけではない。つらい経験をした分、これからは逃げずに頑張れると思う」

=2017/03/20付 西日本新聞朝刊=

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