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若者の思い「政治が翻弄」 平和大使演説阻止へ圧力 「核の傘」依存 長崎の関係者落胆

「高校生に本会議場から出ていくよう求めることもできる」。本紙が入手した外務省の公電には「ある国」の大使からの強い言葉がつづられていた
「高校生に本会議場から出ていくよう求めることもできる」。本紙が入手した外務省の公電には「ある国」の大使からの強い言葉がつづられていた
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 核兵器廃絶を訴える高校生平和大使たちの演説が今年、ジュネーブの軍縮会議で実現しなかった背景には、核保有国とみられる他国からの日本政府に対する圧力があった-。西日本新聞が入手した外務省の公電からは、核兵器禁止条約の採択に向け大詰めを迎える中、一部核保有国の強硬な姿勢や、被爆国ながら「核の傘」に依存する日本政府の苦しい立場が浮かぶ。核廃絶運動に携わる長崎の関係者からは、落胆の声が上がった。

 公電によると、スピーチ見送りの要請があったのは今年2月10日、同国の軍縮代表部次席主催の昼食会だった。次席が進藤雄介公使に対し「貴国が毎年軍縮会議で実施している高校生のスピーチを止めていただけないか」と発言した。

 進藤公使は「次世代を担う若い世代に核軍縮・不拡散関連業務を委嘱している」などと反論したが、次席は「考えは分かるが、少なくとも軍縮会議の場ではふさわしくない。高校生の意見表明の場ではない」「高校生を日本政府代表団に1日だけ含めるという方法は問題がある」と指摘した。

 3月3日には、同じ国の軍縮大使が高見沢将林大使に「日本国内に原爆に対する特別な感情があることは理解しているので昨年は公の場で反対はしなかった」とした上で「今後は手続き規則違反として異議を申し立て、ブロックする」と強硬な姿勢を見せた。外務省はこれを受けて、スピーチの見送りを決めたという。

 唯一の戦争被爆国である日本は、米国の「核の傘」に依存することを考慮し、7月に採択された核兵器禁止条約に署名していない。日本が主導し、国連総会に毎年提案している核兵器廃絶決議案でも今年は条約に直接触れておらず、被爆者らからは批判の声が上がる。

 軍縮会議が開かれたジュネーブを8月に訪れた今年の高校生平和大使を務める溝上大喜さん(17)=長崎市=は「核保有国を含め多くの国々の人から、自分たちの活動は大きな意味があると言われていた。反対意見があったのが事実なら、悲しい」と話した。

 高校生平和大使派遣委員会共同代表の平野伸人さん(70)=同市=は当時、外務省から他国が反対していると説明を受け「米国に忖度(そんたく)しているのではないか」と感じたという。“圧力”を示す文書の存在を受け「高校生たちの純粋な思いが政治に翻弄(ほんろう)され、会議で伝えられなかったのは残念。愚直に核廃絶を訴えていくという決意を新たにするしかない」と語った。

【ワードBOX】高校生平和大使

 核兵器廃絶を求める署名を集め、国連へ提出する高校生。1998年、長崎の2人が反核署名を携えて米ニューヨークの国連本部を訪ねたのが始まり。市民団体「高校生平和大使派遣委員会」が毎春、被爆地の広島や長崎を中心に公募で選ぶ。2013年以降は外務省の「ユース非核特使」の委嘱を受け、14年からは夏に国連欧州本部(ジュネーブ)での軍縮会議本会議場で代表者がスピーチをしてきたが、今年は見送られた。代替措置として日本政府代表部主催のレセプションで、3人の高校生が各国外交官ら約60人を前にスピーチした。

=2017/11/14付 西日本新聞朝刊=

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