過労死家族を助けたい 福岡に支援の会発足

過労で夫が倒れた15年前を振り返る安部佳世子さん。当時は結婚して10カ月だった=10月末、北九州市
過労で夫が倒れた15年前を振り返る安部佳世子さん。当時は結婚して10カ月だった=10月末、北九州市
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 大手広告会社やNHKの過労死問題が注目を集める中、家族に対する支援の輪が九州で広がっている。福岡でも、弁護士らを交えた「過労死を考える家族の会福岡」(福岡市)が発足した。立ち上げに関わった北九州市小倉北区の主婦、安部佳世子さん(48)は15年前に夫が倒れ、重度の四肢まひとなった。自らの経験を踏まえ、同じ境遇の人々の支えになりたいと願っている。

 安部さんの夫、貢二さん(48)は北九州市内の橋の設計会社に勤務していた。業務進行を指揮する立場で発注元の急な要請に応じることも多く、平日は深夜に帰宅、休日出勤も続いた。

 原因不明の微熱が1カ月続いた2002年6月、貢二さんは自宅で就寝中に急に呼吸を乱し、心停止状態に。救急搬送されて一命を取り留めたものの、以後寝たきりの生活になった。

 労働基準監督署の資料によると、発症1~5カ月前の時間外労働は厚生労働省が定める「過労死ライン」の月80時間を超え、月102~118時間に上った。「元気だったら、今ごろ家族と楽しく過ごしていたはず。夫は仕事が好きだったけれど、仕事に幸せな日々を奪われた」

 貢二さんが倒れた当時、安部さんは妊娠7カ月。新婚生活は暗転した。看病に加え、生まれた長男の育児に追われた。支援の手もなく、一人で労災申請や会社との交渉に当たり、ストレスで血尿が出ることも。「不安が強くなり、いつしか何の感情もわかなくなった。この苦しみは同じ立場の人にしか分からない」

 04年12月、貢二さんは労災と認められた。安部さんが今回、家族の会の発足に加わったのは、一人で苦しんだ当時の体験がある。

 過労死を巡る家族会は1989年、愛知県で初めて発足。その後、全国各地に広がり、16団体に増えた。九州では、宮崎、大分両市を拠点にする「東九州過労死を考える家族の会」が昨年11月に発足した。いずれも家族同士の情報交換や労災認定に向けた支援、啓発活動に取り組む。家族の会福岡は今年10月に結成総会を開き、約30人が参加した。12月10日には福岡市・天神でシンポジウムを開く。

 23日は勤労感謝の日。過労死等防止対策推進法が14年に施行され、働き方改革が叫ばれているが、16年度に労災認定された過労死は107件(うち九州11件)、過労自殺(未遂含む)は84件(同12件)に上る。

 安部さんは「会社のために無理して働くのを美徳と考える企業体質が変わらない限り、過労死はなくならない。今後、過労死に悩む遺族が出たとき、私たちの経験を伝えて支えになりたい」と呼び掛けている。

 事務局の福岡第一法律事務所=092(721)1211。

=2017/11/24付 西日本新聞朝刊=

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