ミサイル想定一斉メール 福岡市が全国2例目訓練 全列車停止、伏せる市民

緊急速報メールを受信し、地下通路で身をかがめる訓練参加者=1日午前10時4分、福岡市・天神
緊急速報メールを受信し、地下通路で身をかがめる訓練参加者=1日午前10時4分、福岡市・天神
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 福岡市は1日、北朝鮮からの弾道ミサイルの通過を想定した訓練を実施した。市全域や近辺の携帯電話に緊急速報メールを配信し、JRや地下鉄など市内を走る全列車は一時停車した。警報音とともに一斉に届いた緊急メールに戸惑う市民や観光客もいたが、市によると大きなトラブルはなかった。

 ミサイルを想定し携帯電話にメールを配信する訓練は青森県深浦町に続いて2例目。市には「会議中で迷惑」「メールが届かない」など苦情や問い合わせが1日夕までに約130件あった。市防災・危機管理課は「市民や企業に身を守る行動を確認してもらう機会になった」としている。

 訓練はミサイル発射で全国瞬時警報システム(Jアラート)が発令されたと想定。午前10時に「訓練」と記した上で「建物の中、又は地下に避難して下さい」とのメールを配信し、さらに通過を知らせる情報を5分後に配信した。

 市営地下鉄と西日本鉄道は、市内を走る計約30本の列車を最寄り駅に停車させ、安全確認の訓練をした。JR九州は、市内の在来線数十本をその場で停車させ、メールで訓練と確認した後に運転を再開した。

 避難行動訓練もあり、天神中央公園では参加者約50人が地下通路に避難。舞鶴小では全校児童約600人が授業を中断して身を伏せた。駅や空港などでは、直前にも周知していたこともあり、利用者は冷静に対処していたが、一斉に鳴り響く警報音に驚く外国人観光客らの姿もあった。

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「有事」前提に識者警鐘 「国民の不安過度に高める」

 福岡市は1日の訓練で、同市上空の弾道ミサイル通過を想定したが、軍事専門家はこうしたルートで北朝鮮が発射実験をする可能性は極めて低いとの見方だ。ただ、大がかりな訓練があれば市民は軍事衝突の可能性を意識せざるを得ない。政策提言に取り組むNPOは、こうした国や自治体による危機管理の「アピール」が、対話による解決の必要性をかすませかねないことに危機感を訴える。

 北朝鮮の弾道ミサイルは、これまで東北や北海道の方向に発射されてきた。北朝鮮はグアム周辺に発射するとも威嚇したが、この際は中四国の上空通過を予告している。

 福岡市の上空を通過し洋上に落下させるルートが考えにくいのは、その場合は韓国本土や領海の上空も通過することになるためだ。元自衛隊分析官で軍事戦略評論家の西村金一氏は「在韓米軍が迎撃する可能性があり、単なる挑発では済まない」と指摘。もし九州にミサイルが飛来するとすれば「戦争に突入し、攻撃目標にされた時」とみる。

 非営利団体「言論NPO」の工藤泰志代表は、各地で繰り返されるミサイル発射を想定した訓練を「気休めで、国民の不安を過度に高めるだけだ」と批判。解決策が示されないまま市民の危機感が高まれば「北朝鮮につけ込まれぬよう安定政権を求める世論形成につながりかねない。政治に利用されないことが大事だ」と警鐘を鳴らす。

 その上で工藤代表は「対話による解決を諦めてしまえば軍事行動しかなくなる。平和的解決のシナリオを描くのは難しいが、有事の際に最前線となる九州の住民はもっと関心を持っていい」と呼び掛ける。

=2017/12/02付 西日本新聞朝刊=

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