【土砂崩れ現場ルポ】「山ごと落ちてきた」住民ぼうぜん 『人の声が聞こえるぞ』叫ぶ作業員 

山の崩落で、巨大な石に倒された電柱=11日午前11時49分、大分県中津市耶馬渓町
山の崩落で、巨大な石に倒された電柱=11日午前11時49分、大分県中津市耶馬渓町
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山の崩落で民家が土砂に埋まり、安否不明者の捜索が続く現場=11日午前10時37分、大分県中津市(本社ヘリから)
山の崩落で民家が土砂に埋まり、安否不明者の捜索が続く現場=11日午前10時37分、大分県中津市(本社ヘリから)
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心配そうに現場を見つめる近くの住民たち=11日午前9時43分、大分県中津市耶馬渓町
心配そうに現場を見つめる近くの住民たち=11日午前9時43分、大分県中津市耶馬渓町
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 100メートルもの高さから流れ落ちた土砂や岩が、寝静まる小さな集落に突如、襲いかかった。11日未明、大分県中津市耶馬渓町で起きた土砂崩れ。「山ごと落ちてきた」「雨も降っていないのに、なぜ」。むき出しになった山肌を住民はぼうぜんと見つめ、地元消防団員らは懸命に救助作業を続けた。

捜索中雨 住民無事願う

 押し流された土砂が民家を無残に押しつぶし、橋をふさいでいる。のどかな山村の変わり果てた光景にぼうぜんとするしかなかった。土砂崩れ現場に11日朝、入った。

 集落のすぐ上にある山の一部が地滑りのように崩れ、木が根こそぎもげて、何もかもをのみ込んでいる。かろうじて下に見える屋根を見て、そこに家があったことに気付いた。背丈を超える2~3メートルほどの岩が無数に横たわり、電線が垂れ下がっている。まだ、小さな岩がごろごろと音を立てて落ちてくる。

 「まるで土砂降りのような激しい音がした」。押しつぶされた民家の対岸に住む女性(37)は午前4時前、異様な音で目を覚ました。消防車や救急車の音が響き、異常事態と気付いた。明るくなり、目にした景色に「何が起きたのか。言葉が出なかった」と身を震わせた。女性の母親(64)は「竜巻のような突風で木が揺れていた。恐ろしかった」と立ち尽くした。

 行方が分からない江渕めぐみさん(52)一家とは普段から親しかった。目が悪い母の橋本アヤ子さん(86)をめぐみさんが献身的に介護していた。近く結婚式を控えているという娘の優さん(21)を思い、女性は「無事でいてほしい」と言葉を絞り出した。

 現場に駆け付けた親族たちは、祈りながら救出作業を見守った。岩下愛子さん(76)の義妹(73)=同県玖珠町=によると、岩下さんは3月に夫を亡くしたばかりで、息子の義則さん(45)が懸命に励ましていたという。「何とか生きていて。とにかく情報が欲しい」。何度もつぶやいた。

 岩下アヤノさん(90)の弟、吉峯林さん(87)と妻の陸子さん(84)は「来ても何もならんのやろうけど、どうしようもなくて来た。崩れやすいわけじゃないはずなのに何で。ご飯も喉を通らん」と涙をにじませた。

 午前9時ごろ、重機が到着。本格的な捜索活動が始まり、消防や自衛隊の車両、重機を搬入する大型車があわただしく行き交った。土砂の撤去作業に協力した地元の建設会社の専務、宇土修司さん(41)は「作業員が『人の声が聞こえるぞ』と叫んでいた。無事な人がいるかもしれない」と望みをつないだ。近くの松原良夫さん(68)は「早く捜索してほしかったが、ただ見ていることしかできなかった。早く他のところもやってほしい」ともどかしさを募らせた。午前11時を過ぎ、現場には雨が降りだした。

=2018/04/11付 西日本新聞夕刊=

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