水俣病救済法が成立 2度目の政治解決 具体策づくり難航も
水俣病未認定患者への一時金支給と原因企業「チッソ」の分社化などを盛り込んだ水俣病被害者救済法が8日午前、参院本会議で可決、成立した。1995年に続く「第2の政治解決」と位置付けられ、救済対象となる症状が拡大された。新潟水俣病被害者も救済対象。政府は今後、熊本、鹿児島、新潟3県や被害者団体などと協議し、具体的な救済策を定めるが、一部被害者団体は同法に納得しておらず、難航も予想される。
救済対象となる症状は、代表的な四肢末端優位の感覚障害(手足の先ほどしびれる感覚障害)をはじめ(1)全身性(2)口の周囲(3)舌‐の感覚障害(4)求心性視野狭窄(きょうさく)(視野が狭くなる)にまで拡大。チッソが一時金を支払い、国と関係県が療養費(医療費の自己負担分)、療養手当を支給する。
一時金の額は与党案(150万円)と民主党案(300万円)に開きがあったため、今後の協議に委ねた。環境省は、救済希望者は約3万人と見積もっているが、一時金支給対象は約2万人とみている。ただ、現行認定制度や訴訟などで損害賠償を求めている被害者は対象外。救済を求める場合は申請や訴訟を取り下げる必要がある。
一時金のほか、現行制度の認定患者に対する補償金などの原資を確保するため、チッソを分社化し、子会社の株式売却益を充当する手順も規定。救済を確実にするため、分社化は一時金の額確定後、チッソが支払いに同意するまで手続きを始めないこととし、株式売却は救済を終え、市況が好転するまで凍結する。
一時金の額や救済対象者の判定法などの策定見通しについて、斉藤鉄夫環境相は「できるだけ早く決めたい」と述べるにとどめている。
=2009/07/08付 西日本新聞夕刊=
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【解説】「国家の情」示せるか 水俣病救済法が成立
現行認定制度で水俣病と認められない患者に一時金支給などを行う水俣病被害者救済法が8日、成立した。公式確認から53年を経て、2度目の「政治解決」が図られたことになるが、残念ながら、これでは悲惨な水俣病の歴史に終止符を打つことはできない。
一部被害者団体は、原因企業「チッソ」の分社化に反発。引き続き司法による救済を求める姿勢を打ち出し、政治への不信感を強めている。
一方、高齢化という現実を踏まえ「早期解決」を求めてきた被害者団体は、今回救済法に歓迎の意思を示している。だが、政府が今後定める具体策の内容次第では、救済対象の判定や一時金の額などをめぐり、新たな不満、不公平感などが生じる懸念も捨てきれない。
一時金や療養費が支給されても、体に刻まれた健康被害は消えない。だからこそ、水俣病問題の最終解決は、被害者の心の傷が癒えない限り、訪れることはないといえる。求められるのは、金銭ではあがないきれない、被害者に寄り添うことで示されるチッソと国の謝罪、誠意ではないのか。
著書「苦海浄土(くがいじょうど)」で水俣病の実態を世に問うた作家石牟礼道子さんは、法案に反対するため上京した患者支援団体に託した国会議員あての手記で、こう述べている。
「お願いですが、日本という国の情が何処(どこ)にあるのか、お教え頂きとうございます」
救済法は、加害企業が消滅する道筋も示した。水俣病問題は、いや応なく「最終段階」に入ることになる。救済法成立で事足りるのか。政府、政治は、あらためて被害者の実態を正面から見つめ直し、国家としての「情」を示せるかが問われている。
=2009/07/08付 西日本新聞夕刊=

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