かりんとう一筋30年余 畦道グループ食品加工組合代表の渡辺晃子さん(74) [大分県]

畦道グループの代表を務める渡辺晃子さん
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畦道グループのメンバー。渡辺さん(前列中央)を囲んで。「元気に楽しく仕事する」こともモットーだ
畦道グループのメンバー。渡辺さん(前列中央)を囲んで。「元気に楽しく仕事する」こともモットーだ
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菜種油で揚げて蜂蜜と砂糖をからめた出来たてのかりんとうはつやつやしていい香りがする
菜種油で揚げて蜂蜜と砂糖をからめた出来たてのかりんとうはつやつやしていい香りがする
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真剣な表情で、かりんとうを揚げる畦道グループのメンバー
真剣な表情で、かりんとうを揚げる畦道グループのメンバー
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渡辺さんが「私たちのお城」と語る加工所
渡辺さんが「私たちのお城」と語る加工所
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 カリッ。心地よい歯応えとともに素朴な甘みとほのかな香りが口の中に広がる。「おいしい」「でも、もう少し塩を入れた方が甘みが効いてくるわね」。日田市天瀬町本城地区にある農事組合法人・畦道(あぜみち)グループ食品加工組合の加工所で、揚げたてのかりんとうを試食し意見を交わす女性たち。代表の渡辺晃子さん(74)が親しみを込めて「私たちのお城」と呼ぶ加工所は、甘い香りと女性たちの活気に包まれている。

 「畦道」は渡辺さんたちが1977年に設立した生活改善グループが原点。現在65~74歳の女性7人が畑仕事や家事の合間の都合いい時間に交代で働く。仕事もわが家も守ってほしいから「無理なく長く働く」がモットー。給料のほか利益が出たらボーナスを支給。定年はないが家庭の事情で退職する人のために退職金も積み立てる。こんな“優良企業”に育てたのは、渡辺さんたちの知恵とたゆまぬ挑戦心だった。

 「嫁入り10年」。66年に農家に嫁いだ渡辺さんは当時、母からそう諭された。「10年は、姑(しゅうとめ)に従い家業と家事に専念するのが立派な嫁ということ。今叫ばれている女性の社会参加などは口に出せない時代でした」

 だがそこは「もともと言われた通りにするのが嫌な性分」の渡辺さん。10年を待たずに地域の仲間2人と米の裏作でゴボウやインゲンの栽培を始め、軌道に乗ると今度は仲間14人で休耕田を活用したサトイモ、小豆の共同栽培に挑戦。収入で旅行などを楽しんだ。

 でも収入の喜びより大きかったのは達成感。「一人ではできないことも仲間と一緒なら何とかなる」。そんな思いを強くした。活動の楽しみは茶請けを持ち寄り仲間と畦道に座って語り合うひととき。こうして集った仲間と結成したのが生活改善グループだった。

 グループは当初、手作り弁当などを手掛けたが、主婦も農家の担い手も兼ねる女性たちが時間の制約を受けるため中止。そんなとき畦道に持ち寄った茶請けのかりんとうを思い出した。「これなら作り置きできる」。グループの中の5人で83年、借金して加工所を新設。かりんとう製造・販売を始め、86年の法人化を機に生産を本格化させた。

 「畦道」のかりんとうは当初、地元で入手できるヨモギやごまなど3種類から始め、大豆、サツマイモと徐々に増加。小麦粉ではなく米粉を使ったかりんとう「こめ媛(ひめ)」にも挑戦し現在16種類に上る。近年は茶やしいたけの生産者、コーヒー販売会社などとのコラボ商品も開発。「汗だし、知恵だし、踏み出していかないと、飽きられてしまうから」と挑戦を続ける。

 女性が活躍する労働環境と安定経営が評価されて11月23日、本年度の日本農林漁業振興会会長賞を受賞。「畦道」の成功を学ぼうと、国内外からの加工所視察も絶えない。渡辺さんは惜しみなく製法を伝授した上で、最後にこう付け加える。「女性はすごく可能性を持ってるんですよ」

 渡辺さんの願いは仲間と育てた「畦道」を次の世代につないでいくこと。「無理のない働き方で女性たちに生きがい、夢を持ってもらいたいから。失敗したらやり直せばいい。仲間と一緒なら元気になれる。女性が元気になれば地域も元気になる。そうでしょ?」

 ◆メモ 農事組合法人・畦道グループ食品加工組合は、加工所(日田市天瀬町本城1040の2)を拠点に月~金の午前8時半~午後5時半に毎日3、4人、1人が月15日ほど働く。年間売り上げは1100万~1500万円。かりんとう(90グラム)は216円、こめ媛(50グラム)は250円。加工所=0973(57)9180。

=2016/12/01付 西日本新聞朝刊=

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