【見解】イメージとのギャップ 人手不足を加速 生活特報部・河津由紀子

◆連載「老いの支え手支えるには」を終えて 
 ある女性保育士(27)は高校生のころ、介護職を目指そうとしたが、親や教諭に「大変だからやめた方がいい」と説得された。その両者とも介護現場で働いた経験はなかったのに。介護現場の人手不足をテーマにした連載「生きる働く13部 老いの支え手 支えるには」(8月30日~9月3日)の取材で聞いた話だ。

 なぜそんなことが起こるのか。現場の声に、一つの答えがあった。「介護職がニュースになるときは、『給料が安くてきつくて大変』という話題が多い」。そういった側面は確かにある。人手不足で休暇が取りにくく、賃金は全産業平均より低い。心身共に利用者との密着度が高い仕事で、向き不向きがはっきりしているが、人手不足のため人材を選べない現状もある。

 しかし、取材した介護職の人たちは、そんな課題を抱えつつも、仕事そのものに対しては生き生きしていたのが印象的だった。職員同士で高齢者とのやりとりを自慢話のように語り合う場面もあり、私もつられて笑った。こうした介護職の「実態」と、冒頭に紹介した「イメージ」とのギャップが、介護現場の人手不足を加速させているのではないか、と感じた。

 連載では、介護の仕事が好きなのに辞めざるを得ない矛盾した現状と、離職を防ぐために長期休暇や子育て支援、介護職自身のスキルアップに取り組む事業所や団体を紹介した。介護の魅力を広く伝える必要性も、業界関係者の言葉として紹介した。

 取材では、私なりの介護の魅力も見つけた。それは介護の日々が、実は「ちょっとすてきな毎日」であることだ。職員が利用者の背中を穏やかにさする。認知症の女性が得意なモヤシの根取りをする。寝たきりの男性が好きな職員がいると目を開ける。30代の介護職男性はそんな風景を「小さな奇跡の連続」と呼んだ。介護の現場では、元気な利用者が翌日に亡くなることも珍しくない。介護職の人たちは、「今」が貴重でいとおしい時間だと知っているのだ。

 私にも要介護となった祖母がいる。介護職に家族介護の悩みを重ね、悲愴(ひそう)感のある仕事という印象を持っていたが、覆された。今後も取材を通して実態とイメージとのギャップを埋めたいと、私なりの「支えるには」を考えている。


=2016/09/23付 西日本新聞朝刊=

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