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【意見】宇宙研究の中心テーマに 橋本正章氏

九州大理学研究院教授 橋本 正章氏 
九州大理学研究院教授 橋本 正章氏 
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◆ノーベル賞の「重力波」

 宇宙を観測するにはさまざまな方法がある。観測手段は主に望遠鏡だ。最も有名なのは光学望遠鏡だが、現在では可視光以外でも電波、赤外線、紫外線、エックス線、ガンマー線を使った望遠鏡が世界各地で活躍している。これらの望遠鏡はすべて光を観測しており、波長帯が異なっているだけだ。可視光は目に見えるので実感が伴うが、その他の波長となるともはや見えないので、観測データを信じるしかない。

 30年前に宇宙を見る観測手段は劇的に進歩した。大マジェラン星雲で超新星が発見され、爆発の際放出されるニュートリノが偶然に初めて日本で観測された。この観測をきっかけに太陽からでてくるニュートリノ観測にも成功し、2015年のノーベル物理学賞につながった。宇宙物理・天文学と素粒子物理学がニュートリノでつながってしまったということである。

 そして最後に残っていたのが重力波の検出だった。重力波は、アインシュタインが1936年に発表した一般相対性理論から導かれる予言の一つだった。この理論では物質の存在により時間・空間(時空という)が曲がる。さらに重力が強くなるとブラックホールができることも予言された。

 時空を細かい網の目のように例えて視覚化してみよう。どこかにゴルフボールを置くと網はへこむ。ボールが重ければ重いほど、よけいにへこむ。ボールを静かに置くと網の目はゆっくりへこみ、静かな状態が保たれる。ボールを強くゆすると網はガタガタに動くだろう。この動きは波のようになって伝わっていく。ちょうど、静かな水面に石を投げ入れるとそこから波紋が周辺に伝わっていくように。このように時空の変化が極端になればなるほど、重力波は強く放出されるのだ。

 これまでさまざまな重力波の放出が予測されてきた。重力波の検出など注目もされなかった55年ごろから、米国ではウエーバーが重力波検出の装置を考え始めていた。これは私が学生のころから有名で、彼だけが重力波を検出したと主張していると揶揄(やゆ)されていた。

 しかし、ブラックホール合体に伴う重力波がついに米国のグループにより検出され、グループを率いたマサチューセッツ工科大のレイナー・ワイス名誉教授ら3氏が今年のノーベル物理学賞に輝いた。重力波天文学の幕開けとされる。

 さらに米国・欧州のグループにより超高密度星の合体に伴う重力波も観測され、様々な波長の光も確認された。重力波は今後、宇宙研究の中心テーマとなっていくことだろう。

    ◇      ◇

 橋本 正(はしもと・まさあき)九州大理学研究院教授 1954年生まれ、福岡県久留米市出身。米国ブルックヘブン研究所、ドイツ・マックスプランク研究所などで勤務後、九州大で教壇に立つ。専門は天文物理学。


=2017/10/27付 西日本新聞朝刊=

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