【見解】「異質な大国」とどう向き合う 中国総局・川原田健雄

◆中国共産党大会を取材して

 メールには切迫感が漂っていた。「(夫が)警察に暴力を振るわれ、連れて行かれた」「3時間余り拘束されている」。受信したのは10月19日未明。以前取材した北京の人権派弁護士の妻からだった。

 嫌な予感はあった。中国共産党大会が開幕した前日の18日、弁護士は人権活動家への弾圧に抗議し、習近平党総書記の罷免を求める書簡をインターネット上で公開した。当局を刺激しなければいいがと心配した直後の拘束だった。メールの約1時間後、弁護士は帰宅したが、取材は断られた。海外メディアとの接触やネットでの政治的発言を禁じられたのだという。

 政府や軍が共産党の指導下にある中国では、5年に1度の党大会は一大政治イベント。当局は党批判の封じ込めに躍起だ。党大会中、北京以外への「旅行」を強要された人権活動家も少なくない。

 厳戒態勢下の党大会で、習近平党総書記は2020年に「小康社会(いくらかゆとりのある社会)」を実現し、今世紀半ばまでに「社会主義現代化強国」を建設すると宣言した。一方で、政治、経済、文化などあらゆる面で党の統制を強める方針を示した。

 豊かで強い国をつくるから、党には逆らうな-。習氏の言葉は国民にそう迫っているように聞こえた。ネット利用者の実名登録など言論統制と市民活動の監視は、習指導部になって一層厳しくなった。国歌の替え歌さえ刑罰の対象となる息苦しさだ。

 「約14億人の国民をまとめるには強い力が必要だ」。党員の知人は締め付けを正当化した。経済成長が鈍り、貧富の格差が拡大すれば、国民の不満は党に向きかねない。統制強化はそうした危機感の裏返しでもあるのだろう。

 日本も人ごとではない。中国は外資系を含む民間企業に党組織の設立や党代表の役員登用を求めている。経営に党が口を出す可能性もある。8月下旬、ネット規制を巡り党機関紙、人民日報系の環球時報は「中国市場を重視するなら、中国の法規を守り、足を削って靴に合わせることも必要だ」と主張した。世界2位の経済力を背景に、中国の価値観に合わせて「足を削る」よう求める場面は今後増えるに違いない。党支配が際立つ「異質な大国」とどう向き合うか、世界が問われている。


=2017/11/10付 西日本新聞朝刊=

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