【意見】課題は距離、インフラ、価格 廣田正樹氏

九州大大学院統合新領域学府 オートモーティブサイエンス専攻教授 廣田 正樹氏
九州大大学院統合新領域学府 オートモーティブサイエンス専攻教授 廣田 正樹氏
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◆電気自動車の普及

 電気自動車(EV)への関心が高まっている。自動車の排ガスや地球温暖化対策として、フランスや英国が2040年までにエンジン車の生産を中止することを検討していることが大きな要因だ。

 EVとはバッテリーにためた電力をエネルギー源とし電動機(モーター)を動力源として走る車。ガソリンや軽油を燃焼させるエンジン車とは異なり、走行中に排ガスや二酸化炭素を排出しない。

 EVはとても乗り易い。アイドリングがないので停車時に無音かつ無振動。低速トルクが大きいので加速もよく、変速機がないので変速ショックもなくて発進から高速まで滑らかに加速していく。

 このように良いことずくめのEVであるが、さらに広く普及するには、(1)航続距離の拡大(2)充電インフラの拡充(3)車両価格の低減-の課題がある。

 2010年に初代日産リーフが登場した時の航続距離(1回充電の走行距離)は200キロ(JC08モード)であった。10月に販売が始まった2代目ではバッテリー容量を増やし航続距離を400キロまで延ばしており、エアコンを使った実走行でも300キロ程度は安心して走行することが可能である。EVは気温が低い時に航続距離が減る傾向があるが、これを克服できれば日常的な使い方で不満がでる場面は少なくなるだろう。

 充電インフラについてはまだ不安が残る。現在、急速充電器と普通充電器を合わせて2万台以上あるとされているが、地域的に偏在しており一層の拡充が求められる。東京都心でも夜間や土日に使える急速充電器は少なく困ることが多い。東京ミッドタウンや六本木ヒルズの駐車場のように、買い物中に充電できるよう普通充電器が多く設置されている所もあるが、筆者は短い時間に急速に充電するより駐車するたびにこまめに充電していく方が適していると考えており、宿泊施設や商業施設などの駐車場への普通充電器の拡大設置を望んでいる。

 車両価格に関しては、2代目リーフは初代とほぼ同じ300万円台で販売されている。絶対的な価格としては高いが、値上がりしているエンジン車との差が縮まってきている。ユーザー視点での問題はEVを売る時である。現状売る時の価格は低い。長期使用によるバッテリーの劣化が心配されるためだ。買い替えずに乗り続けようと考える人のためにも、古くなったバッテリーをリーズナブルな値段で交換できるサービスが待たれる。

 電気自動車は、安い燃料代ではなく乗りやすさをアピールする時代になった。さらに広く普及するためには現状の課題をひとつひとつ解決していくことが求められる。

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 廣田 正樹(ひろた・まさき)九州大大学院統合新領域学府 オートモーティブサイエンス専攻教授 1962年、東京生まれ。国内自動車メーカー研究員を経て、2017年4月より現職。博士(工学)。専門は自動車用センシングシステム、機能材料・デバイス。


=2017/11/10付 西日本新聞朝刊=

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