【見解】家族の「夢」連携に注視 諫早支局・山本敦文

◆J1元年 V・ファーレン長崎

 今季からJ1に初参戦するV・ファーレン長崎について興味深いデータがある。ホームのトランスコスモススタジアム長崎(長崎県諫早市)の観戦者のうち、家族と一緒に来場した人の割合が極めて高いのだ。Jリーグが行った2016年スタジアム観戦者調査によると、家族同伴率は68・2%。J1、J2全40クラブのトップで、リーグ平均(52・8%)を15ポイント以上も上回っている。

 この傾向はJ1昇格を決めた昨シーズンも変わらなかったと思える。ホーム戦があるスタジアム周辺では家族連れが芝生で弁当を広げたり、親子でボールを蹴ったりする姿をよく目にした。今月8日にあった今季初練習にも幼い子を連れたファンが目立った。一部の熱狂的なサポーターだけでなく、家族みんなで開幕を心待ちする-。J1元年を迎えた長崎県の風景だ。

 県民にとってV長崎は特別な存在と言える。雲仙・普賢岳噴火災害(1990~96年)の際に全国制覇を成し遂げて被災者を勇気づけた地元の国見高サッカー部OBチームが母体となって、2004年に島原半島で前身の「有明SC」が誕生。長崎原爆70年の15年からは毎年夏に平和祈念ユニホームを発表するなど、核廃絶を願う被爆地の思いの発信にも努めてきた。V長崎のJ1昇格が、東日本大震災などの被災地や太平洋戦争戦地の訪問を続けた天皇陛下に象徴される平成時代の終わりの時期となったことにも不思議な巡り合わせを感じる。

 発足から14年。九州リーグ、JFL、J2と階段を上り、経営危機も乗り越えて、いよいよ夢の舞台が近づいてきた。課題も少なくない。全国から大勢のサポーターの来場も見込まれる中、スタジアム周辺の交通渋滞をどう解消するか。拠点がある県南地域に比べて関心が低いとされる佐世保市など県北地域にも浸透し、どう経営の安定化につなげるか。下部組織やサッカー場などの環境を整え、プロを夢見る子どもたちの思いに応えるか…。クラブだけでなく県や地元自治体、民間企業などが連携した対策が必要だ。その取り組みを注視したい。

 Jリーグはクラブと地域社会が一体となった「ホームタウン」構想を掲げている。長崎県にとってJ1元年は、その試金石となる。


=2018/01/12付 西日本新聞朝刊=

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