【見解】分断いとわず「勝ち」にこだわる ワシントン支局・田中伸幸

 ◆トランプ米大統領1年

 「トランプはごみ」「肥だめ」-。トランプ米大統領が就任してちょうど1年の1月20日、首都ワシントンであったデモ「女性大行進」の参加者が掲げたプラカードに、こんな汚い文言を見つけた。

 トランプ氏自身、リーダーとして品位を欠く罵詈(ばり)雑言を、ツイッター投稿を含めて発信し続けているだけに、けなされるのは自業自得。嫌われ方は激しさを増す一方だ。

 ただ、トランプ氏の支持率は就任直後から大崩れはせず4割前後を維持している。

 「ツイッターにはうんざりだが、俺たちに見向きもしなかった既存政治と戦い、減税も実現した」。トランプ氏が再興を訴える東部や中西部の「ラストベルト(さびついた工業地帯)」に多い支持層の白人労働者たちは、今もトランプ氏が世の中を良くすると固く信じている。トランプ氏のポピュリズム(大衆迎合政治)は与党共和党支持者らに確実に浸透している。

 1年目の功績として減税や規制緩和を強行し、経済成長を後押しした点が挙げられるが、政策の多くで支持層を利するよう徹した姿勢は目を見張った。環境汚染が懸念される資源開発への積極姿勢はその一例で、反トランプの野党民主党支持層に多い環境保護の訴えなどには耳を貸さない。

 政権の混迷が続く中、11月には議会中間選挙がある。負けず嫌いな自信家で、大統領選を通じてどこに票があるか、勝ち方を知るトランプ氏が、共和党支持層や無党派層を標的にポピュリズム色を強めるのは必至だ。表向きは全国民に政策への理解や協力を呼び掛けても、低迷する政権浮揚のためなら国民間の対立激化もいとわないだろう。

 トランプ大統領の誕生で、米社会は深刻な分断状態にある。「仲が良かった近所の共和、民主党支持者同士が最近、あいさつすらしない」とワシントン郊外に住む男性が嘆くように、異論を受け入れようとしない不寛容で、柔軟さを欠く雰囲気が各地で漂う。

 そんな状況を助長させかねないトランプ氏の、一部国民にだけ迎合するような政治姿勢に対し、米主要メディアは批判を強める一方だ。しかし、批判に固執しすぎて、支持層が政策をどう受け止め、反応するのか目を凝らさなければ、米国の今は理解できない。怒るときは怒りつつ、偏りすぎない視点を保ちたい。

=2018/02/09付 西日本新聞朝刊=

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