【意見】時間短縮にもっと議論を 長谷川 晶一氏

ノンフィクション作家 長谷川 晶一氏
ノンフィクション作家 長谷川 晶一氏
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◆プロ野球「申告敬遠制」

 プロ野球(NPB)において「試合時間短縮」が喫緊の課題となって久しい。サッカーやバスケットボールと違い、試合終了時間が定められていない野球では、球場を訪れた観客の帰途の問題、あるいはテレビ中継における放送時間との兼ね合いから、常々「時間短縮」が叫ばれてきた。そして、その一環として1月11日、野球のプロ、アマ合同規則委員会において、今シーズンからNPBで「申告敬遠制」が採用されることが、ついに決まった。

 これは投球することなく敬遠四球にすることができる新制度で、米大リーグでは、すでに2017年シーズンから実施されている。敬遠する場合、守備側の監督が主審に意思表示をすれば敬遠(故意四球)が認められ、1球も投げることなく打者を一塁に歩かせることができる。また、申告せずに従来通り4球を投げることも可能。

 さて、導入の意図としては、「試合時間短縮」が謳(うた)われているものの、関係者の間ではその効果については疑問の声が多い。本気で「時間短縮」を目指すのであれば、1試合に一度あるかどうかという敬遠に要する時間を短縮するよりも、「長すぎるサイン交換」「投球間隔の短縮」など、他に手をつけるべきポイントはたくさんある。今回のようにプレーそのものに関わる新制度は選手のパフォーマンスに影響を与え、「野球」というスポーツの変質を招きかねないので注意が必要だ。

 たとえば、勝負を分ける緊迫した場面。守備陣は入念なサインの交換を繰り返し、1球ごとに十分な間を取りながら守備陣形を変える必要があるかもしれない。投手交代も頻繁に行われ、そのたびに試合は中断されることだろう。本気で「時間短縮」を謳うのであれば、この辺りにメスを入れる必要があろう。

 しかし、それによって、本来持つ野球の醍醐味(だいごみ)が損なわれるようなことがあっては本末転倒だ。この流れで行けば「ホームランボールがスタンドに入った場合は時間短縮のためにベースを1周しなくてもよい」というルールや「9イニング制を改めて7イニング制にしよう」という声も出てくるかもしれない。

 17年のNPBの平均試合時間は3時間8分。過去20年間で3時間を切ったことは一度もない。戦術が複雑になればなるほど、これからも試合時間は伸びていくことだろう。緊迫感のないダラダラした試合は論外だが、プロならではの高度な駆け引きにおいて時間を要するのは当然のこと。果たして、本当に時間短縮は必要なのか。改めて根本的な議論が必要ではないだろうか。

 長谷川 晶一(はせがわ・しょういち)ノンフィクション作家 1970年、東京都生まれ。早稲田大卒業後、出版社勤務を経て2003年に独立。「プロ野球語辞典」「極貧球団 波瀾の福岡ライオンズ」など野球関連の著書も多い。

=2018/02/09付 西日本新聞朝刊=

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