熊本県
「決め手なし」「負け比べ」 参院選 記者座談会
●自民、危機感募り組織固め 民主は「大物投入」空回り みんな、不満の受け皿に
11日に投開票された参院選熊本選挙区(改選数1)は、自民党現職の松村祥史氏(46)が5人による激戦を制し、再選を決めた。選挙戦を担当記者が振り返った。
■予想以上の差に
A 事前の報道各社の世論調査では、松村氏と民主党新人の本田浩一氏(43)が横一線で、全国屈指の激戦区と言われたが、ふたを開けてみれば約4万4千票差。予想以上に差がついた。
B 自民県連幹部は世論調査の結果を「肌感覚と違う」と言い続けてきた。昨年の衆院選のような逆風がやんだという判断だ。それでも県連は「風は吹かない。頼んだ人しか票は入らない」と危機感をあおり、組織戦を徹底した。公明との間で選挙協力を進め、前回参院選で約4万票の大差をつけられた熊本市には、郡部の県議や市町村議、業界団体幹部を投入、約6万人の名簿を積み重ねた。熊本市で負けはしたが、約1万6千票差に抑えた。組織力の勝利といえるだろう。
A 民主陣営は菅直人首相が2回熊本入りしたのを始め、連日閣僚や党幹部を投入した。効果はなかったのか。
C 一概には言えない。天草市・御所浦島に入った小沢一郎前幹事長は多くの住民が手を振って見送るほど盛況だったし、鳩山由紀夫前首相の人気も健在。だけど票につながったのかは疑問も残る。終盤、党幹部の街頭演説に50人ほどしか集まらない時もあった。しかもほとんどは連合熊本や国民新党関係者。民主県連は警備などの準備に連日追われ「こんなに次々と来られると、ほかの活動ができない」とこぼしていた。
■知名度上がらず
A 民主は野党時代と同様、「風」に頼った。与党の力で、業界団体など保守地盤は切り崩せなかったのかな。
B 全体として業界団体の動きは鈍かったが、これまでの自民との関係を重視する動きが目立った。例えば県農政連は自主投票を決めたが、県南部を中心に、下部組織では松村氏を推薦する動きが相次いだ。自主投票としていたJA熊本市も、終盤は幹部が松村氏の応援でマイクを握っていたよ。民主は国政与党とはいえ、県議会の勢力図は民主の2人に対し、自民は34人。ある団体幹部は「県議会で力を持つ自民を無視できない」と漏らしていた。
C 民主の地方組織の弱さは今に始まった話ではないが、一部国会議員の動きも物足りなかった。例えば昨夏の衆院選で初当選した新人議員の地元で開かれた総決起集会。席は半分ぐらいしか埋まっていなかった。逆風下で戦ってきた自民と比べ強固な後援会組織を築けていない。
A 民主の松野頼久衆院議員は「批判を受けながらの選挙は今までなかった」と振り返っていた。与党に追い風はなかなか吹かない。組織力を高めないと、国政選挙では苦戦が続くのでは。
B 一方の自民も善戦したとはいえ、熊本市や周辺の合志市、菊陽町などで本田浩氏に競り負けた。都市部の無党派対策は後回しになった印象がある。終盤、党内一の人気を誇る小泉進次郎衆院議員が熊本市に入ったが、松村氏はその場にいなかった。聴衆からは「進次郎君は知っているけど松村さんってだれ」という声も出ていたよ。
A 最終日、松村氏は熊本市中心部を練り歩いたが、握手に応じない人も多かった。本田浩氏も党幹部と一緒のときを除くと市民の反応はいまいち。2人の知名度はなかなか上がらず、消費税問題など政策の違いも分かりにくかった。陣営関係者は「決め手がない」「負け比べの選挙だ」と頭を抱えていたね。
■共・創は「埋没」
D みんなの党新人の本田顕子氏(38)が10万票以上集めたのも、二大政党への不満の表れかもしれない。6月上旬の事務所開きに集まったのは30人程度。遊説では自ら党の旗を持ったり、ビラを配ったりしたが、逆に「一生懸命頑張っている」という評価につながったようだ。握手を求めて断られることはほとんどなく、一般有権者の反応はかなり良かった。
B 消費税についても「増税反対」を明確に打ち出し、支持を広げた。唯一の女性で、最年少候補。演説も次第にうまくなった。キャラクターとしては、5人の中で一番目立っていたかも。
E 共産党新人の安達安人氏(54)と、政治団体「日本創新党」新人の前田武男氏(53)は本田顕氏の健闘のあおりを受けた。安達氏の陣営幹部は「他党も増税反対を叫び、共産党が埋没した」と悔しがっていた。
F 前田氏は地元商店街を自転車で遊説したり、街宣車に支持者がペンキで応援メッセージを書き込んだり、一風変わった選挙運動を繰り広げたけど、二大政党対決やみんなの党が注目されて、伸び悩んだね。
■熊本市で開票遅れ
A 衆院選でミスが相次いだ熊本市選管は今回、開票終了が選挙区で約1時間半、比例代表では2時間以上も予定より遅れた。
E 市選管が原因に挙げたのは疑問票の多さ。選挙区では「民主 本田」「みんな 本田」などと書かれた疑問票が多く、開票立会人のチェックを受けるために時間がかかったようだ。
A そういったことは事前に想定して、対策を講じておくべきだったと思うけどね。次こそ汚名を返上してほしい。
=2010/07/14付 西日本新聞朝刊=
11日に投開票された参院選熊本選挙区(改選数1)は、自民党現職の松村祥史氏(46)が5人による激戦を制し、再選を決めた。選挙戦を担当記者が振り返った。
■予想以上の差に
A 事前の報道各社の世論調査では、松村氏と民主党新人の本田浩一氏(43)が横一線で、全国屈指の激戦区と言われたが、ふたを開けてみれば約4万4千票差。予想以上に差がついた。
B 自民県連幹部は世論調査の結果を「肌感覚と違う」と言い続けてきた。昨年の衆院選のような逆風がやんだという判断だ。それでも県連は「風は吹かない。頼んだ人しか票は入らない」と危機感をあおり、組織戦を徹底した。公明との間で選挙協力を進め、前回参院選で約4万票の大差をつけられた熊本市には、郡部の県議や市町村議、業界団体幹部を投入、約6万人の名簿を積み重ねた。熊本市で負けはしたが、約1万6千票差に抑えた。組織力の勝利といえるだろう。
A 民主陣営は菅直人首相が2回熊本入りしたのを始め、連日閣僚や党幹部を投入した。効果はなかったのか。
C 一概には言えない。天草市・御所浦島に入った小沢一郎前幹事長は多くの住民が手を振って見送るほど盛況だったし、鳩山由紀夫前首相の人気も健在。だけど票につながったのかは疑問も残る。終盤、党幹部の街頭演説に50人ほどしか集まらない時もあった。しかもほとんどは連合熊本や国民新党関係者。民主県連は警備などの準備に連日追われ「こんなに次々と来られると、ほかの活動ができない」とこぼしていた。
■知名度上がらず
A 民主は野党時代と同様、「風」に頼った。与党の力で、業界団体など保守地盤は切り崩せなかったのかな。
B 全体として業界団体の動きは鈍かったが、これまでの自民との関係を重視する動きが目立った。例えば県農政連は自主投票を決めたが、県南部を中心に、下部組織では松村氏を推薦する動きが相次いだ。自主投票としていたJA熊本市も、終盤は幹部が松村氏の応援でマイクを握っていたよ。民主は国政与党とはいえ、県議会の勢力図は民主の2人に対し、自民は34人。ある団体幹部は「県議会で力を持つ自民を無視できない」と漏らしていた。
C 民主の地方組織の弱さは今に始まった話ではないが、一部国会議員の動きも物足りなかった。例えば昨夏の衆院選で初当選した新人議員の地元で開かれた総決起集会。席は半分ぐらいしか埋まっていなかった。逆風下で戦ってきた自民と比べ強固な後援会組織を築けていない。
A 民主の松野頼久衆院議員は「批判を受けながらの選挙は今までなかった」と振り返っていた。与党に追い風はなかなか吹かない。組織力を高めないと、国政選挙では苦戦が続くのでは。
B 一方の自民も善戦したとはいえ、熊本市や周辺の合志市、菊陽町などで本田浩氏に競り負けた。都市部の無党派対策は後回しになった印象がある。終盤、党内一の人気を誇る小泉進次郎衆院議員が熊本市に入ったが、松村氏はその場にいなかった。聴衆からは「進次郎君は知っているけど松村さんってだれ」という声も出ていたよ。
A 最終日、松村氏は熊本市中心部を練り歩いたが、握手に応じない人も多かった。本田浩氏も党幹部と一緒のときを除くと市民の反応はいまいち。2人の知名度はなかなか上がらず、消費税問題など政策の違いも分かりにくかった。陣営関係者は「決め手がない」「負け比べの選挙だ」と頭を抱えていたね。
■共・創は「埋没」
D みんなの党新人の本田顕子氏(38)が10万票以上集めたのも、二大政党への不満の表れかもしれない。6月上旬の事務所開きに集まったのは30人程度。遊説では自ら党の旗を持ったり、ビラを配ったりしたが、逆に「一生懸命頑張っている」という評価につながったようだ。握手を求めて断られることはほとんどなく、一般有権者の反応はかなり良かった。
B 消費税についても「増税反対」を明確に打ち出し、支持を広げた。唯一の女性で、最年少候補。演説も次第にうまくなった。キャラクターとしては、5人の中で一番目立っていたかも。
E 共産党新人の安達安人氏(54)と、政治団体「日本創新党」新人の前田武男氏(53)は本田顕氏の健闘のあおりを受けた。安達氏の陣営幹部は「他党も増税反対を叫び、共産党が埋没した」と悔しがっていた。
F 前田氏は地元商店街を自転車で遊説したり、街宣車に支持者がペンキで応援メッセージを書き込んだり、一風変わった選挙運動を繰り広げたけど、二大政党対決やみんなの党が注目されて、伸び悩んだね。
■熊本市で開票遅れ
A 衆院選でミスが相次いだ熊本市選管は今回、開票終了が選挙区で約1時間半、比例代表では2時間以上も予定より遅れた。
E 市選管が原因に挙げたのは疑問票の多さ。選挙区では「民主 本田」「みんな 本田」などと書かれた疑問票が多く、開票立会人のチェックを受けるために時間がかかったようだ。
A そういったことは事前に想定して、対策を講じておくべきだったと思うけどね。次こそ汚名を返上してほしい。
=2010/07/14付 西日本新聞朝刊=
バックナンバー
- 「決め手なし」「負け比べ」 参院選 記者座談会(07/14)
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