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【1強考】「岩盤」突破身内の影 国家戦略特区 首相主導成果には明暗

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 カン、カン、ダダダ…。瀬戸内海に面する愛媛県今治市。9月末、市街地を望む高台では、学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)が国家戦略特区を活用し、新設を目指す岡山理科大獣医学部の建設工事音が響いていた。

 「腹心の友」。首相安倍晋三は、学園理事長の加計孝太郎をそう呼ぶ。先の国会では、特区指定に安倍の意向が働いたのではないかとの疑惑が浮上し、支持率の急低下を招いた。

 安倍は「(計画が認定された)今年1月20日に初めて承知した」と国会で答弁し、関与を否定している。「そんな訳はない。『自分が働き掛けた』と、堂々と言ってほしい」。保守系会派に属する今治市議の一人は、安倍の説明に納得していない。

 大学誘致は、市が1975年に表明した学園都市構想にさかのぼる。開学を歓迎する声は多く、地元のフリーペーパー発行会社社長、井出千尋(64)も「塩漬けの土地がようやく有効活用される」と期待する。

 市は2007年以来、国の構造改革特区で獣医学部新設を提案し続けたが、認定されなかった。14年までに不認定は計15回に上る。

 井出は数年前、人を介して加計と会ったことがある。

 加計は言ったという。「粘り強く頑張りたいね」

    ◇      ◇

 「成長戦略の突破口が、国家戦略特区。あらゆる岩盤規制を打ち抜いていく」。14年9月、安倍は臨時国会の所信表明で新たな特区制度をぶち上げた。

 安倍は、金融緩和、財政出動、成長戦略を「三本の矢」と呼ぶ。国家戦略特区は、地域限定で規制緩和や制度改革をトップダウンで進める成長戦略の柱だ。

 15年6月、市は国家戦略特区に提案。すると一転、1回目の申請で特区に指定された。開学予定は来年4月。事業計画も認定されたが、疑惑の影響で文部科学省の設置認可は先送りされた。

 市は既に、愛媛県と共に施設整備費を最大96億円助成する方針を決めている。「学生や教職員向けの集合住宅が、もう10棟以上は建っている」。市内の不動産会社社員、河上貴之(47)は、開学の延期に伴う影響に顔を曇らせる。

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 混沌(こんとん)とする今治市の特区。一方で、14年に特区指定第1号となった福岡市は成長の真っただ中にいる。

 「1、2年前は手探りだったビジネスが、今は向こう(顧客側)から来る」。モノとインターネットをつなぐIoT会社社長、橋本司(42)は語る。特区による電波法の緩和で技術開発が加速、取引先も増えた。

 オフィスは、市などが小学校跡に設けたスタートアップ(創業)支援施設「福岡グロースネクスト」に構える。区分けされた教室に100社超が入居、うちIoT関連などには将来性を見込んだファンドや企業が計20億円を投資している。

 15年まで5年間の人口増加率(5・1%)は全20政令市で最高。開業率(7%)も3年連続トップを走る。「天神ビッグバン」と銘打つ都心再開発の計画地は、九州の商業地の最高価格だ。

 明暗が分かれる加計学園と福岡市。共通するのは、宰相とのパイプ。福岡市長の高島宗一郎も安倍と親しいことで知られる。

 開発経済学が専門の立教大教授、郭洋春は「特区本来の目的は、日本にない最先端の技術やビジネスを海外から持ってきて、国内に浸透させることだ。特区の提案、審査、受注企業の間につながりが目立ち、『特定の人のための特区』になっている」と指摘している。

 =敬称略

=2017/10/08付 西日本新聞朝刊=

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