【争点の現場 衆院選2017】(3)アベノミクス 恩恵はほんの一握り

佐賀市の久保泉工業団地にある機械加工メーカーの工場。アベノミクスが始まる5年前と比べ、給与は上がっていないという=9月28日
佐賀市の久保泉工業団地にある機械加工メーカーの工場。アベノミクスが始まる5年前と比べ、給与は上がっていないという=9月28日
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 稲穂が実った田園地帯の一角に、工場群が広がる。通りはオイルのにおいが漂い、金属を削る甲高い音が響いていた。約50ヘクタールの敷地に25社が入居する佐賀市最大の久保泉工業団地。政策が始まって5年になるアベノミクスの恩恵は中小企業に届いているのか-。

 取材に応じた5社の社員や幹部はいずれも「ない」と首を横に振った。機械加工メーカーの責任者(46)は「もうかっているのは大手だけ」と言う。工場を案内してもらうと、薄明かりの中、従業員が電柱ほどの太さの金属柱を旋盤で削っていた。錦糸卵を焼く機械の部品といい、食品工場に納入する中堅機械メーカーから受注した。

 「うちは孫請け。入札はいつも5社以上集まり、一番安くないと(仕事を)取れない。販売単価は上がらず、ずっとデフレの中にいる」とこぼす。給与も「5年前と比べ、上がっていない」。

 同じ団地には、大手自動車部品メーカー、小糸九州(佐賀市)の大きな工場もある。2016年度の「九州・沖縄100億円企業ランキング」(東京商工リサーチ調べ)で、売上高571億9900万円は635社中、76位。前年度の89位から順位を上げた。

 アベノミクスの大胆な金融緩和で円安が定着し、輸出企業には追い風が続く。

 ただ、輸出の少ない下請けは足かせになる場合もある。切削加工用の刃をスウェーデンから輸入している金属加工メーカーは「円安で調達費が高止まりしている」と嘆く。

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 「100万円や200万円の振り袖や訪問着がよく売れた」。佐賀玉屋(佐賀市)6階の催事場で3月に開かれた恒例の呉服の特売会。熱気に包まれた当時の様子を売り場担当者はそう振り返る。

 呉服、宝石、美術品の頭文字を取った「ご・ほう・び」の売れ行きは、デパートの「景気指標」となる。

 担当者によると、外商や店頭でも100万円クラスの宝飾品の売れ行きが順調に伸び、8月中間決算は呉服と宝石の売り上げが前年同期を超えたという。

 日経平均株価は、2012年12月の政権発足時のほぼ2倍。土地の値段も上昇しており、資産を持つ富裕層がさらに豊かになったとされる。県内の流通関係者は「100万円程度の宝石なら、現金や外商用クレジットカードで一括払いが普通。明らかにアベノミクスの恩恵だ」と明かす。

 一方、デパートであまり服を買わないという30代の会社員女性は「服はショッピングセンターや通信販売で安く買うことが多い」と話した。

 県によると、県内の月間現金給与額の年平均は15年は27万3187円。前年より1362円増えたが、リーマン・ショックの影響が出る前の08年に比べ、1万6千円以上低い。

 県内の元外商マンは言う。「100万円の呉服や宝石を買うのはすでに持っているお客様ばかり。ほんの一握りの人だけですよ」

=2017/10/05付 西日本新聞朝刊=

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