【争点の現場 衆院選2017】(4)整備新幹線 「フル」期待に温度差

九州新幹線西九州(長崎)ルートの高架橋工事が進む嬉野市内
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 武雄温泉駅(武雄市)の周辺に響くつち音。九州新幹線西九州(長崎)ルートの開業に向け、駅南側から嬉野へ伸びる高架の工事が進む。駅の構内には「2022年 次は西へ」と開業をアピールする掲示板やのぼり。そこにはこんな記述も。「日本初 フリーゲージトレインを西九州へ」

 幅が異なる新幹線と在来線の線路を、同一車両が車輪の間隔を変えて走るフリーゲージトレイン(FGT)。長崎ルートに導入し、博多駅から武雄温泉駅までの一部で在来線を活用、そこから長崎までは建設中の新幹線区間とするはずだったが開発が難航。政府、与党が見送りを固めたばかりだ。

 この事態の変化に色めき立つのが、博多から長崎まで全線新幹線のフル整備を求める「フル規格派」だ。とくに県内を代表する温泉地、武雄、嬉野の関係者はフル整備への思いをあきらめていない。

 武雄市で温泉施設を経営する田中隆一郎さんは「全区間を新幹線として整備すれば山陽新幹線がそのまま乗り入れ、広島、岡山、大阪から観光客を運んでくれる」。嬉野市の老舗旅館を営む嬉野市商工会の小原健史会長も「絶対、全線フル規格」と訴える。

 観光関係者の一人は「FGTが白紙となり、フルに議論を戻す絶好のチャンスだ」と打ち明ける。

    ◇      ◇

 「どなたがその800億円を出していただけるのか」

 9月25日、県庁の応接室。フル規格による整備を県に要望した県商工会議所連合会(会長=井田出海・佐賀商議所会頭)の面々は、山口祥義知事にこんな問い掛けを受けた。

 フル規格の場合、県の負担額が800億円以上、県民1人当たり約10万円に上るとして、知事は反対の立場だ。地域の過疎化を招きかねない並行在来線問題にも触れ、態度を硬化させる。

 実際、長崎ルートから外れた鹿島市では、在来線の利便性が大幅に低下するとみられ、「特急はディーゼルカーになり、本数は5分の1になってしまう」(市企画財政課)と危機感を募らせている。

 FGTがJR佐賀駅に停車することを前提に、駅前再開発構想を進めていた佐賀市も「(フル規格の場合は)ルートによって佐賀駅とは別に新幹線駅ができれば、駅周辺のまちづくりに影響が出る可能性が高い」(幹部)と心配する。

 長崎ルートは、武雄温泉で博多間の在来線と長崎間の新幹線を乗り継ぐ「リレー方式」で2022年度に暫定開業する予定。都内で9月27日にあった与党の検討委員会では、フル規格化や在来線を活用する「ミニ新幹線」など新たな整備方法の検討が始まった。

 佐賀市中心部の白山名店街。履物店を営む3代目の中牟田均さん(68)は「県東部はメリットがないんじゃないかな。佐賀市は(長崎への)通過点だろうし」とぽつり。福岡や長崎へ客足を奪われる「ストロー現象に拍車がかかる」(飲食店経営者)との懸念もあり、温度差は広がっている。

=2017/10/06付 西日本新聞朝刊=

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