【争点の現場 衆院選2017】(5)憲法改正 核ミサイル募る不安

佐賀空港を垂直離陸する米海兵隊オスプレイ=昨年11月、佐賀市の佐賀空港
佐賀空港を垂直離陸する米海兵隊オスプレイ=昨年11月、佐賀市の佐賀空港
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 眼下にのどかな大豆畑が広がり、天望デッキからは間もなくノリ漁が始まる有明海が望める。佐賀市川副町の佐賀空港。ここに、島しょ防衛のための陸上自衛隊基地を造り、オスプレイ17機を配備する計画が持ち上がっている。

 昨年11月。1機のオスプレイが佐賀市上空を初めて飛んだ。「一瞬、ブーンと…。ほんのちょっと聞こえたぐらいかな」。空港から直線距離で約4キロの自宅庭で、自営業男性(39)は機体を眺めた。目視できるほどの低空飛行でも、騒音は気にならなかった。あれから約1年。配備計画は一向に進展しない。

 「早く基地を造らないと大変なことになる」。有事の際に招集される非常勤の予備自衛官でもある男性は焦る。北朝鮮の脅威は増すばかりなのに、備えは不十分だと感じるからだ。

 9月15日早朝、北朝鮮の弾道ミサイルが北海道上空を飛んだ。6回目の核実験に加え、2カ月連続のミサイルの日本越え。テレビは全国瞬時警報システム(Jアラート)におびえる人々を映していた。「Jアラートは現代の空襲警報。日本は戦争状態に入った」。男性は3人の子どもたちを抱き締めた。

 2週間後。安倍晋三首相は「国難突破解散」を訴え、総選挙に踏み切った。自民党は公約に憲法改正を掲げ、自衛隊明記を盛り込む。「国民の生命と財産を守り抜く」。首相の言葉に男性はうなずく。「有事の際は自分が国を守る」

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 同じく川副町の戸ケ里漁港では、21日のノリ漁解禁に向け慌ただしさを増していた。ノリ漁師の男性(67)は、長さ10メートル、重さ10キロはある養殖用支柱を海底に突き刺す作業に連日汗を流す。だが、疲れ切って帰っても夜遅くまでテレビを見てしまう。「選挙が気になって眠れん」からだ。

 安倍政権か希望の党か。どちらも「政権選択」を叫ぶが、安保法制を重視し改憲を主張する姿勢に変わりはない。希望が議席を増やしても、自民と一つになって巨大な改憲勢力ができるだけではないか。「佐賀空港はオスプレイ基地になり、北朝鮮からミサイルの標的にされる」。選挙後を想像すると、漠然とした不安が募る。

 川副で祖父の代からノリ漁を引き継いで半世紀。「数年後には長男にバトンを渡し、十数年後には孫も海に出る」。その夢はミサイル1発で吹き飛ぶ。

 同じような不安を抱く市民は少なくない。佐賀市の会社員男性(62)は「ミサイルは市民の生命も財産も一瞬で奪う。佐賀が基地の街となれば、そんなリスクと隣り合わせで暮らすことになる」と恐れる。

 配備計画では700~800人の隊員が基地で勤務するとされる。政府は、周辺の商業施設や住宅建設、インフラ整備が進むとアピールし、地元経済界も「地域が活性化する」と歓迎する。それでも男性は、安倍政権の改憲公約と安保政策に納得できない。

 「自民が勝てば9条が改正されて勇ましい憲法ができる。日本は戦争の火ぶたを切るような国になってはいけない」

 =おわり

=2017/10/07付 西日本新聞朝刊=

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