【とうふ物語】(6)ごま豆腐 5兄弟、佐賀発の人気者

ごま豆腐の生産現場で「豆腐5兄弟」をPRする百武博文さん
ごま豆腐の生産現場で「豆腐5兄弟」をPRする百武博文さん
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 1日1万丁以上も売れる人気の豆腐シリーズがある。スーパーの売り場でひときわ目を引く商品名は「ペロリン」。ごま豆腐のペロリンを筆頭に「豆腐5兄弟」を生産するのは佐賀市下田町の「肥前とうふ」だ。

 「佐賀の知られざる名物。ネーミングのセンスに脱帽する」。インターネット上にこう書き込みされるユニークな商品名について、社長の百武博文さん(61)は「ペロリと平らげるおいしい豆腐のイメージ。すっと浮かびました」と話す。

 会社の前身は父が営んでいたこんにゃく店。約40年前、兄に代替わりして「こんにゃく販売は先細る」と豆腐の製造工場を買収した。ところが、25年ほど前、兄は豆腐事業が軌道に乗る前に他界。福岡市で冷凍食品の営業をしていた百武さんが「うまくいかなかったらサラリーマンに戻ればいいか」と会社を継いだ。

 豆腐については全くの素人。スーパーの品質管理者を招いて従業員約20人と生産工程や衛生面の見直しを進めた。3年ほどたったころ、スーパーの仕入れ担当者から「これから豆腐は価格競争になる。どうするんですか」と忠告された。

 「駄目でもともと」。希望を託したのが、ほそぼそと製造していたごま豆腐だった。九州には当時、ごま豆腐を大量生産する会社は少なかった。思い切って商品名をペロリンに変更。工場の機械化に1500万円を投じ、衛生管理の徹底と大量生産を目指した。

 賞味期限をスーパーが求める1カ月に伸ばすことに成功した。サラリーマン時代の営業経験を生かし、九州一円の小売店100社以上にごま豆腐を売り込んで回った。味にも妥協はしなかった。ゴマをいる作業は火加減を小まめに調節できる手作業にこだわった。

 香ばしいごま豆腐のペロリンは5年ほどで定番に育った。「型に縛られない豆腐があっても良いじゃないか」。ペロリンに続いて、ピーナツ豆腐「ペロン」、黒ごま豆腐「クロリン」、呉どうふ「プルリン」、京風ごま豆腐「シロリン」の5兄弟を10年かけてそろえた。

 楽天家の性格が奏功し、兄の思い半ばだった豆腐事業は大黒柱に育った。「今では、九州のほとんどのスーパーに豆腐5兄弟が並んでいる」と目を細める。「自分一人だけの力じゃない、いつもついてきてくれた従業員のおかげ」。社内の結束も、また兄弟のように固まった。

=2017/09/13付 西日本新聞朝刊=

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