日ソ宣言60年 民意見極めて領土戦略を

 日本とソ連(現ロシア)が第2次世界大戦後に国交を回復する「日ソ共同宣言」を調印してから、きょうで60年になる。

 1956年の同宣言により、両国の戦争状態が終結し、日本の国連加盟も確実となって国際社会復帰が加速した。戦後の日ソ(日ロ)関係の基盤となる宣言だ。

 しかし、日ロ間の領土問題はいまだに解決しておらず、宣言で交渉継続が確認された両国の平和条約も締結に至っていない。

 安倍晋三首相は12月にロシアのプーチン大統領を日本に招き、首脳会談を行う。安倍政権は共同宣言60年の節目に、膠着(こうちゃく)している北方領土問題を動かし、日ロ関係を進展させる意欲を示している。

 両首脳は5月、「新たなアプローチ」での交渉で合意した。では日本政府は具体的にどのような方針で領土交渉の決着を図るのか。

 共同宣言は北方四島のうち、色丹、歯舞について「平和条約締結後に引き渡す」と明記したが、択捉、国後には触れていない。

 ロシア側はこの宣言に基づき、最大でも色丹、歯舞の2島引き渡しで決着を図るとみられる。

 一方、日本側は共同宣言調印後「四島返還」を掲げてきた。その後「四島の帰属問題を解決して平和条約を締結」との表現で、四島の日本帰属を確認できれば返還の態様は柔軟に対応する姿勢に修正しているが、原則的に「四島とも日本固有の領土」の立場だ。

 このため、今後短期間で領土問題を解決しようとすれば、双方が何らかの形で譲歩することが必要になる。その場合、日本政府は「四島とも固有の領土」というこれまでの大原則との整合性をどう保つか-が問われるだろう。

 中国の急速な台頭というアジア地域の情勢変化を前にするとき、領土問題の最終決着を急がず、ロシアとの関係強化を優先するという大局的な選択もあり得る。

 高度な政治判断が求められる局面である。安倍政権は北方領土と国際情勢を巡る国民的合意がどのあたりに落ち着くか、十分に見極めて交渉戦略を立てるべきだ。


=2016/10/19付 西日本新聞朝刊=

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